マイケル・シーン2007年06月01日 18時00分42秒

クィーン(2006)
MICHAEL SHEEN  1969/2/5  UK

「クィーン」でブレア首相を演じたシーン。似てるーっと思った人は多いだろう。当の本人がどんな人かは知らないが庶民的な若い首相を演じた彼はとても魅力的だった。

彼を最初に見たのは「アンダーワールド」のヴァンパイア。ただでさえ異形の者(笑)なのに邪悪さ満点。特徴のギョロっとした目をギラギラさせて確かに人間離れした形相は全編に渡って暗い画面の中でも目立ちその存在感は抜群。

「アンダーワールド」では目立ちこそすれ好み的に魅力的には思えなかったが、次に観た「サハラに舞う羽根」の彼はヴァンパイアに比べればかなりソフトになっていた(当たり前)。作品としてはややいただけないのだけど主演のヒース・レッジャーを囲む友人たちがシーン、ルパート・ペンリー・ジョーンズ、クリス・マーシャルと英国の若手俳優を揃えていて非常に楽しめた。シーン演じるトレンチは祖国のために命をかける英軍兵士だが、中盤以降に捕虜となりぼろぼろのなりで登場しレッジャーと決死の脱出劇を演じるため出番は多い。

「タイムライン」「キングダム・オブ・ヘブン」と続くいわゆるコスチュームもの。シーンの古風な容姿、舞台俳優でもありその力強い演技のせいか非常に迫力があり似合う。「タイムライン」は敵側の英国軍を指揮し、言うまでもなく嫌らしいくらいの憎まれ役をかっている。ジェラルド・バトラーとの戦いぶりは見応えあり。
「キングダム・オブ・ヘブン」は序盤の僅かなシーンでの出演に留まるが、鍛冶屋のオーランド・ブルームの脇のギラギラした目の彼は間違いなくシーンで嫌でもわかった。(笑)

スーツ姿の現代人の彼を見るのは「ブラッド・ダイヤモンド」が最初になる。今年「クィーン」で姿を見られるのは知っていたがこちらはまったく知らなかったのでびっくり。衣装が変わってもイメージは付いてまわるのか、お世辞にも善良なキャラクターとは言い難い。利益優先を考える企業の人間だもの。しかも巨大な金額が動くダイヤモンド市場。現代人のやな奴もリアルだ。

でもって「クィーン」である。彼がブレアを演じるのはTVドラマで若き日の彼を演じて以来2度目。今度は就任間もなく一大問題に直面する首相で、はじめて女王に謁見する時の固まった笑顔に始まり、事故後の国民の間に広まろうとする王室への不信感を察知して女王に声明を発表する事を提言する必死の表情。女王と何度か会話を交わすうちに彼女の心の内に触れて理解を示す。ブレアの心の変化の表現は見事だと思う。
若く庶民的で英国にしては異質な感さえするこの首相を時に滑稽に時にチャーミングに応援したくなるような人物にしたのはシーンだ。ミレン演じる女王の静かな威厳と人間らしさを、彼の演じたブレアの存在がバックアップして輝かせていたとも思う。

ミレンだけでなく彼も英国アカデミー賞で助演男優賞にノミネート。ロサンゼルス映画批評家協会賞では受賞している。
ウェールズ出身で王立演劇学校で演技を学び、舞台での評価も高い。今後、映画では役の幅を益々広げていってくれることと思う。敵役で光る俳優はとても期待できるしね。

余談だがケイト・ベッキンセールとの間に一児がいるが、彼女は「アンダーワールド」で出会ったレン・ワイズマン監督とじきに結婚。シーンも共演してたのにねえ。失礼なっ!

ギャスパー・ウリエル2007年06月04日 00時08分21秒

ハンニバル・ライジング(2007)
GASPARD ULLIEL  1984/11/25  フランス

久しぶりに、この子、可愛いっ♪と言いたくなる若手俳優の笑顔に出会ってしまった。ハグして頭をなでなでしてあげたくなるような笑顔。おばさんは嬉しいよ。(何、言ってんだ)

ギャスパー・ウリエルは注目のフランス人若手俳優。パリ郊外の出身で大学の映画科に学び在学中からTVに出演し始める。
映画では「ジェヴォーダンの獣」にも出ていたようだが記憶にない。今なら絶対に判ると思うけど再見しなければなるまい。

はっきりと認識したのは「かげろう」。これのウリエルは青春期の丸刈りの少年。時は戦時下。誰に庇護されていたかもわからぬ一人で生き抜いてきたかのような道徳を知らぬ野生児のよう。少年と言うにはかなり大人びた表情で、エマニュエル・ベアールは彼にどうしても惹かれていってしまう。大人びているだけでなく彼には色気があった。ベアールじゃなくても惹かれるかもね。(笑)

「ロング・エンゲージメント」の彼はやや幼い。幼さ、純情さ、脆さといったもので包まれた少年のような彼だからこそ、戦場を逃げ出したかったことにも、恋人のオドレイ・トトゥがどうあっても彼を探し出そうとすることにも、説得力が得られた。
ジャン・ピエール・ジュネとトトゥの「アメリ」コンビのどこか幻想的な雰囲気に彼はぴったりだった。

そんな少年少年してた彼だがその幼さにも色気にもそんなに惹かれていたわけではなかった。将来が期待できる美形俳優だと思っていた。
私が最初にドキッとしたのは「パリ、ジュテーム」の一篇“マレ地区”でのことだ。「ロング・エンゲージメント」から2年は経つのだろうか、確かに美しく成長している。しかも逞しくなってる。はじめて見る青年っぽいウリエル。
彼が見せたのは仕事先で出会った一人の青年がどうしても気になって、どきどきしながら話しかける・・・という。この青年が気になって何度も振り返ったり、たどたどしく話しかけたりするウリエルが可愛い♪話しかけられた彼はウリエルのあの笑顔に心揺さぶられたに違いないのだ。
別にゲイ話が好きな方ではないが、ガス・ヴァン・サントの美少年、美青年の撮り方は非常に美しく、魅力的なのはどの作品を観ても感じられる。今度は是非、このコンビで長編作品を期待するのは私だけではないはずだ。ちなみに本人たちの間でもその気持ちはあるようなのでいつか実現する可能性もありかと!

そして話題にならざるを得ない「ハンニバル・ライジング」。何と言ってもウリエルが演じるのはハンニバル・レクターの青年期。いかにしてレクターが誕生したか・・・だものねえ。いろいろ期待されていただろうと思う。
正直言って作品には物足りなさを感じ納得しにくいのだが、ここではそれはいいだろう。なんにせよウリエルは文句なしに良いのだから。少年期の面影を残す線の細い柔らかな表情と、復讐に駆り立てられる時の後のハンニバル・レクターに繋がるあの表情。繊細さと知性と狂気を孕んだ人格を覗わせる演技は評価されてもいいと思うし、実際そういう評が多いようだ。美しいだけじゃなくて、彼の持つ雰囲気やこれから益々磨きがかかるだろう演技力に絶対期待したい。

「ハンニバル・ライジング」で一気に注目度が高まりインタビューなどの素顔もあちこちで見られるが、すっかり大人っぽくなって見目麗しいフランス青年のくせに、まあ、その笑顔のキュートなこと♪ぼっこりできるエクボは、実は昔犬に噛まれた傷痕なのだとか。でもそれがチャームポイントになってるようなー。

ガス・ヴァン・サント監督や「ハンニバル・ライジング」の主演などハリウッドとの距離も近くなり、これからの露出度が高くなることは確実かと。楽しみなのだ♪

サンシャイン20572007年06月05日 00時05分30秒

サンシャイン2057(2007)
サンシャイン2057 SUNSHINE
2007 英 監督:ダニー・ボイル
キリアン・マーフィー 真田 広之 クリス・エヴァンス ミシェル・ヨー ローズ・バーン クリフ・カーティス ベネディクト・ウォン トロイ・ギャリティ

太陽の寿命が尽きる。地球を救うために核爆弾を積んで太陽へ向う8人のスペシャリストたちは途中で救難信号を拾った。

いわゆるパニックムービーかと思いきや全然違った。
観る人によっては突っ込まれそうな題材なのにダニー・ボイル色いっぱいのこの作品、私は好きだ!
もとからこのジャンルはパニック映像などではなく、パニックに立ち向かう人間を描くヒューマンドラマ的なところが私は非常に好きなので、そこの作りが甘いと作品的にはだめなのだが、そこはダニー・ボイル。さすがの人間の本質を抉るドラマを作ってくれていた。

真田広之が消えた時に、これは8人の乗組員たちが一人また一人…っていうホラー映画にありがちなパターンなのかと思ったが、いやいやそれぞれに精神面に訴えるものを出している丁寧さで一連のものと一緒には出来ない。
宗教、太陽信仰、自責の念、心の葛藤、生存欲、任務責任感、人類愛・・・登場人物たちのひとりひとりに深く根ざした様々な感情、心理がこの非常事態の閉ざされた空間の中で丁寧に描かれていく。全編に渡ってそれがうまく散りばめられているので、まるごとヒューマンドラマのように思えるくらいだ。
これはいってみればゾンビ映画なのにやはり人間ドラマを思わせた「28日後...」に通じるものがあり、やはりダニー・ボールの作品に共通する人間の心理を描く本質はどのジャンルであっても変わらないのだなと。

彼のことだから映像もデザインも神秘的で美しく閉鎖的な空間でありながら無限大の宇宙の只中にあることを常に思わせた。太陽に対する表現は私は今まで観た中ではその力と神々しさを一番感じられたかもしれない。
ホラーのような一面も見せたが、暗闇の多い場面の中、露骨なサブリミナル映像や光の使い方などもダニー・ボイルらしい演出なのかもしれない。一瞬これはホラー映画だったろうかと結構怖さも感じた。

しかしやっぱりこれは人間を描いた作品だ。パニック映画のクセに有名どころを使わず渋めに面白いキャストを集めたところがまた嬉しい。「28日後...」に続くキリアンに真田、クリフ・カーティス、ミシェル・ヨー、ローズ・バーン、ベネディクト・ウォン。なんとも国際色豊かなチョイス。はてなぜここにクリス・エヴァンス?と思ったが、いやなかなか硬派な演技もするんだなと感心。彼の活躍はポイントが高い。
彼ら登場人物一人一人を大切にしているのがよくわかる映像の数々。彼らの表情が素晴らしいシーンが必ずある。まあ中でもキリアンの表情の活きること!最初は彼がSF?と思ったがこの神秘的な空間での彼の独特の存在感はやはりこの作品の中心だ。

久しぶりに心震わせられるSF映画を観た。舞台が宇宙でもそこにいるのは人間だから。人間の心理が、感情があるから物語が生まれるのだ。いいぞおっ、ダニー・ボイルっ!

アヌーク・エーメ2007年06月14日 13時23分21秒

男と女(1966)
ANOUK AIMÉE   1932/4/27  フランス

この年代の女優を取り上げるのははじめてだと思う。「モンパルナスの灯」を観ていて彼女が出てきた瞬間、周りのものがすべて消えた。ほんとに綺麗な人だ。私の美人の定義はこの人だと実感した。

彼女をはじめて見たのは「男と女」だった。映画を観始めて間もない頃でとりあえず有名なタイトルは観ておこうと思ったうちの1本だった。有名すぎるあの音楽、フランスのメロドラマ的なストーリー。シンプルで美しいラブロマンス。
あの時「美人ってこういう人のことを言うんだなー」と漠然と思った私。今思えば、あれから2,000本以上は映画を観ているだろうが、可愛いとは思いこそすれ「美人」だと心底思える女優には出会えていない気がする。
「男と女」はスタントマンの夫と死別した女が妻に自殺されたレーサーの男と出会う。すっごくドラマティックな設定なのね。どろどろしそうな雰囲気ではなく、音楽や映像が静かに膨らんでいく繊細な大人の恋心を紡いでいた美しい映画だった。当時は普通のラブストーリーとして何気なく観ていたけど、この年になった今「男と女Ⅱ」と合わせてもう一度観てみたい。

その後に彼女を見たのが近年の「プレタポルテ」「百一夜」とアンサンブルキャスト作品だったので、あまり彼女らしさを感じることができなかったかも。出てるなと思いつつそんなに印象深くなかった。
でも「プレタポルテ」でデザイナーのエーメがショーで最終的に見せたものは・・・。思わずにやりとした。彼女のキャラクターにただの綺麗な女では感じられない強さや潔さがあると思った。エーメの凛としたところが効果的かと。

「甘い生活」はマルチェロ・マストロヤンニとアニタ・エクバーグが強烈過ぎてこれのエーメもあまり印象にない。フェリーニの作品だが難解な表現方法で、これ自体が作品として私の好みじゃなかったんだとも思う。退廃的なマストロヤンニが苦手だと思ったこともあるし。

あとは「GO!GO!L.A.」「フレンチな幸せのみつけ方」などの近年の作品でカメオ的な出演のもの。現在の彼女なわけである。老いても美しさは変わらない。年齢を考えるとびっくりする。

で、今頃になって「モンパルナスの灯」を観て改めてその美しさに衝撃を受ける。「男と女」の10年近く前の作品になるのか。可愛らしさもあって本当に目が釘付けになった。ラストの美しい笑顔がますます哀しさを募らせる。
少し若いけど、ほぼ同世代の代表的なフランス女優のカトリーヌ・ドヌーヴの若い頃もとっても可愛いし美人なんだけど、キラキラしたブロンドの彼女はまた違ったタイプの美しさ。エーメに感じたものを彼女には感じなかったのは私の好みなのね。ある方から「めかぶさんはサンドリーヌ・ボネールが好きだから、なんかわかるな」と言われて我ながら納得。

実はこれ以外は未見。たくさんある出演作をもっといろいろ観なくては。今後の課題である。ますます綺麗なエーメに嵌っていくのかもしれないな♪

マーク・ウォールバーグ2007年06月18日 14時51分04秒

ディパーテッド(2006)
MARK WAHLBERG   1971/6/5  USA

マークも映画を観始めた頃からかなり見慣れてきた俳優だ。最初の頃からかなりのやんちゃ坊主のイメージが強く、演技力・存在感ともに成長の見られる最近でもその片鱗は隠せない。

彼のことは最初に観たのが「ブギーナイツ」なので忘れようにも忘れられんのだが・・・。ポール・トーマス・アンダーソン監督作で、彼の役は70年代ポルノ業界のAV男優。話題性満載のうえに評判も良いこの作品で主演を果たした彼の快進撃がここから始まったのはある意味納得。

今更だが人気グループ、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックに兄のドニーについで参加。自身もラップバンドをやったり、カルヴァン・クラインの下着モデルをやったり経歴は華やか。
映画デビューは道徳ドラマのような「勇気あるもの」。ダニー・デヴィートが教師を務めるおちこぼれクラスの兵士の一人。
その次がレオナルド・ディカプリオの青春映画「バスケットボール・ダイアリーズ」だから作品にはかなり恵まれている。

彼の発展のきっかけになったもうひとつにはジョージ・クルーニーとの出会いもあるかも。「スリー・キングス」で意気投合。次の「パーフェクト・ストーム」でも共演。実は「オーシャンズ11」のマット・デーモンも最初はマークだったと言う話。
その「オーシャンズ11」に参加しないで何を選んだかというと「PLANET OF THE APES/猿の惑星」。これがいいのか悪いのかなんともいえない。人間の役なのに、猿顔のメークなしでいけるんじゃないかとか笑い話のネタにされながらも、しかしながら話題のティム・バートン作品である。悪い話じゃないだろう。

猿顔とか言っちゃってるが、まあ、マークはハンサムとは言い難い。先にやんちゃ坊主系だと書いたが、その実、下層階級の貧しい9人家族で育ち、ボストンでの少年時代はストリートの不良少年だったとか、服役経験もあるそうで。
笑うと結構可愛いんだけど、どこか斜に構えていて、眉間に皺寄せて人を威嚇したような眼差しが様になっているのはそのせい?ややもマッチョ気味に鍛えられた身体だしぶちキレたら怖いのかもねえ。
そういう育ちや経験が生み出した彼の面構えはルックスを超えた魅力。そこが彼の俳優としての強みであり売りなのだ。
だもんで悪役がなかなかいけると思うんだが意外にも初期の「悪魔の恋人」でしか見たことがない。でもなんかどこか怪しかったり、過去に後ろ暗さを感じる役が確かによく似合う。ドラマでもアクションでもサスペンスでも警察官、犯罪者、といった役が多いのも彼の特徴。「フェイクディール」「NYPD15分署」「裏切り者」「フォー・ブラザーズ」など。やはりそんな暗いイメージがあるんだろうかねえ。
しかし一貫してるのはどれも最後には正義や仁義、人情に従って生きる男であること。彼にはそんな雰囲気を漂わせるものがあるのかもしれない。

「ディパーテッド」なんかはその最たるもの。実際に観ていてレオよりマットより、私はマークの演技に一番惹かれた。オスカーノミネートはびっくりしたが、彼もこんなところに呼ばれる俳優になったのか~と、ちょっと嬉しかった。

暗い役ばかり挙げ連ねたが楽しいものも結構ある。不運な殺し屋役の「ビッグ・ヒット」。ロック青年のほろ苦いサクセスストーリーの「ロック・スター」。リメイクのわくわくクライム映画「ミニミニ大作戦」。
殺し屋のクセに元はといえばたかが女一人のためにあたふたしまくってる「ビッグ・ヒット」なんて大好きなんだけどなー。力が抜けてる時のマークの表情は優しい。結構“ふにゅ”っとした系だと思う。
コメディやスタイリッシュな作品では、この顔と大真面目に怖いくらいの顔とを使い分けるから効果絶大。このメリハリの良さがぴりっとしていて良いのだ。

順調にキャリアを積んで評判を得てきたからか作品には本当に恵まれていると思う。俳優仲間や監督などとの関係も良好なのだろう。ここ最近の「ハッカビーズ」から「ディパーテッド」「フォー・ブラザーズ」「ザ・シューター極大射程」というラインナップを見てもわかるとおり、有名監督作から評判の新人監督の話題作、コメディからアクションまで主演・傍役も選り取り見取り。
男臭くてどこか危険な匂いのするマークに集まる脚本は後を絶たないだろう。演技力にも磨きがかかってきた30代も半ばの今、じっくり吟味していいキャリアを積んでいってもらいたい。

(ちなみに彼の出演作で名作のリメイクが1本あるのだが、役柄も悪くないんだけど作品的に大駄作で絶対にお薦めできないのでここではあえて挙げません。汚点以外の何者でもないと思う。気になる方は探してください。責任は持てませんー。)