「航路」 コニー・ウィリス2008年11月08日 19時13分49秒

「航路・上」コニー・ウィリス
「航路」 コニー・ウィリス
PASSAGE
by Connie Willis
(ソニー・ マガジンズ)

臨死体験を研究している認知心理学者のジョアンナは神経内科医のリチャードの"臨死"を科学的に解明しようとする研究プロジェクトに協力。ついてはなかなか集まらない被験者になり代わって自ら実験に参加する。擬似臨死状態で彼女が見たものは・・・。

臨死体験の謎の解明をテーマとした本作は単行本で上下巻合わせて800頁を超える長編大作。1ヶ月かけて読んだがなかなか(ホントに)重量感のある作品だった。
臨死体験の多くは「天使を見た」とか「死んだおばあちゃんに会った」とか「トンネルを抜けたら光に包まれた」とか「まだお前の来る所じゃないと追い返された」とか・・・。戻ってすぐに体験談を聞かないとイメージが先行してその手の話に自ら作話されかねないと考える、臨死体験を科学的にとらまえようとするふたりの医師が主人公の本作。
夢さえ起きてすぐに忘れてしまうのだから臨死体験も大差ないのかな~とぼんやり思った私。ありがちなストーリーのミステリーの世界において、ちょっとこのテーマは面白そうだと手にしてみた。

コニー・ウィリスは基本はSF作家なのだそうだ(さしずめ日本だと宮部みゆきだってさ~)。言われてみればSFといっても通じるだろう話かもしれない。しかしながら、登場人物のキャラクターからコメディタッチのキャラクターの行動など文章はかなり面白く、現世と"臨死体験世界"を行ったりきたりする構成など興味深いディティールなど作品に引き込まれる要素がいっぱい。なかなか楽しかった。(でも読みきるのに1ヶ月かかってますけど・・・)
さらに映画への興味もあるらしく本作内に登場する映画タイトルは80年代以降の作品で30本近くごろごろ・・・。せっかくだから後に紹介しよう。

主人公のジョアンナは仕事一筋で没頭すると髪振り乱し、女を捨てたような身なりになってもお構いなしってタイプ。でもきっと細身のブロンド美人なんじゃないかと勝手に想像する。思い浮かんだのは「マイノリティ・リポート」のトム・クルーズの妻、TVシリーズ「コールドケース」の主人公リリー・ラッシュ役のキャサリン・モリス。
もうひとりの主人公、リチャードは作品中でも表記されているがブロンドのキュートなハンサム。こちらは「アップタウン・ガールズ」でブリタニー・マーフィーと絡むミュージシャン。TVシリーズ「Dr.HOUSE」のキュートな青年医師チェイス役のジェシー・スペンサーなんてどうだろう~。
年齢は書いてないが、ジョアンナの方がお姉さんっぽい。っていうか、リチャードが未熟っていうか・・・どんくさいっていうか(笑)。そこがキュートなのかもしらんが。どっちにしてもキャラクターの描き方は誰を見ても魅力的である。物語としてはそこが大事なんじゃないかな~。

ストーリー展開が途中でびっくりさせられるが、後の展開でなるほどなるほど、コニー・ウィリスの力量の見せ所なのだろう。謎解きに迫る最後まで一気に読ませる手腕はなかなかのもの。
科学的、精神分野的表記があり中には読みにくい部分もあるが、全体的にはそんなに難しくない。登場する場面がある意味バラエティに富んでいて想像しながら読むのが楽しい作品ではないかと思うー。

作品中に登場する映画タイトル(めかぶのわかる範囲で):
「フラットライナーズ」「タイタニック」「相続人が多すぎる」「ダイヤルM」「少年は虹を渡る」「わんわん物語」「グローリー」「ジョー・ブラックをよろしく」「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」「愛の選択」「プリティ・ブライド」「プリティ・ウーマン」「ファイナル・デスティネーション」「タイタンズを忘れない」「ホワット・ライズ・ビニース」「ファイト・クラブ」「ダンス・ウィズ・ウルブズ」「ピアノ・レッスン」「サウンド・オブ・ミュージック」「ヒンデンブルグ」「ボルケーノ」「タワーリング・インフェルノ」・・・などなど。