PARIS パリ2009年01月03日 00時40分58秒

PARIS パリ(2008)
PARIS パリ PARIS
2008 仏 監督:セドリック・クラピッシュ
ロマン・デュリス、ジュリエット・ビノシュ、ファブリス・ルキーニ、アルベール・デュポンテル、フランソワ・クリュゼ、カリン・ヴィアール、メラニー・ロラン、ジル・レルーシュ、ジネディーヌ・スアレム

ダンサーのデュリスは重い心臓病で移植が必要だと診断される。手術を待つ日々を彼は姉のビノシュの世話になることにし、ベルヴィルのアパルトマンの窓からパリの街を人々の暮らしを眺める。

クラピッシュ作品の中でもヒューマンドラマ的な群像劇。「スパニッシュ・アパートメント」「ロシアン・ドールズ」の青春系が勿論好きだが、このタイプも好き。パリの街に生きる登場人物たちを描くクラピッシュ監督の視線がおかしくも優しい。そして、最後はちょっと不安を感じつつフェイドアウト的に終わる。

ロマン・デュリスだが、先に挙げた2作では大人になりきれない、しょうがないなぁ~と言いたくなるような男の子っぽい男だったが、今度の彼はちょっと事情が違う。なんだかとてもいい。ロマン・デュリスとクラピッシュ監督のいい関係が伺えるようでなんだか嬉しい。
あまり得意じゃないジュリエット・ビノシュも今回は嫌味がなく時に可愛いと思える瞬間もあった。
「親密すぎるうちあけ話」で知ったファブリス・ルキーニの軽妙さが良い。クラピッシュ監督作は「百貨店大百科」でもそうだったが人間臭さが滲み出ている感じ。ルコント作品とこんなにも違うのね。
そしてもっとも注目したのはアルベール・デュポンテル。最近観た「地上5センチの恋心」でも楽しい役だった。今回はちょっと複雑だけど基本的に優しい男。デュポンテルは「ロング・エンゲージメント」はまったく憶えてないが、「アレックス」は記憶にある。魅力あるフランス中年俳優にまたまたハマりそうだ。
こんな魅力的な俳優たちが集まったクラピッシュの群像劇。楽しくないわけがない。

歴史があって誇り高く美しく、世界中から人々を引き付けてやまない街、パリ。
だけど「人々は不満だらけで、文句を言うのが好き」とデュリス演じる主人公は言う。
これもパリなのだね。いやむしろこれがパリなのか。
パリは憧れていたものの実際に行ってみたら、嫌な気分を味わったという人は多い。なぜだろう?答えがそこにあるかどうかはわからないけど、「永遠の街、パリの現在のポートレイト」を描きたかったというクラピッシュ。彼の視線は存分に感じられる。ちょっとパリジャンたちの内側に入ってパリを眺めた。そんな気分の映画だ。