アントニオ・バンデラス2010年06月12日 19時16分20秒

ザ・エッグ~ロマノフの秘法を追え~(2009)
ANTONIO BANDERAS  1960/8/10  スペイン

久しぶりの上に、なぜ今更この人シリーズ。
今までの傾向からすれば、この濃い~ギラギララテン系オトコは決して好みではない。うちの近所にシネコンがあり公開される洋画は片っ端から観ていたが、数少ない見送った映画がバンデラス&あんじょりの「ポワゾン」と、コリン・ファレル&ジェイミー・フォックスの「マイアミ・バイス」(笑)

多分バンデラスだと意識して観た最初は「デスペラード」と「暗殺者」だと思う。どちらもギラギララテンオトコ全開。スペイン時代の作品は「アタメ」くらいしか観たことがないのだけど、彼はハリウッド進出して大正解だった代表だよねきっと。フェロモン撒き散らしオトコ大好き米国人女性に受けるのは勿論、ブラッド・ピットやディカプリオといった薄めが人気を博している中に大物感を漂わせる俳優の登場は必然だったんじゃないかと。若くてギラギラした強烈な存在感が彼の持ち味。見つめられたらついて行っちゃいそうなセクシーな眼光がとにかく凄い。(って、私はそれが引いてしまう原因なんだけどさ)

そんな彼がフェロモン全開ばかりを前面に押し出しているだけではないのだと知ったのは後になってから。「フィラデルフィア」や「インタビュー・ウィズ・バンパイア」の彼の役に気がついたのは相当後に再見した時のこと。あら、びっくり。こんな繊細さも出せるのね。意外~。
再見で意外な一面に気がついたのはこれだけではない。「愛と精霊の家」の彼も初々しさが見られたことに驚いた。まあ若かったといえばそれまでなんだけど、ギラギラ全開以前の彼もまたいいかも。もちろんその予兆はあるんだけどねん。

ラテン系の濃さは役の幅が広いので俳優としては活躍の場がたくさんある。現代劇からドンパチの西部劇。ファンタジーにホラーにスプラッタ♪後にはコメディにファミリー映画になんでも来いじゃないの。彼のこんなハードさとコメディの混在に目をつけて、特に巧く引き出したのはロバート・ロドリゲスとクェンティン・タランティーノだろうねぇ。どちらも好きな監督で好きな作品がいくつもあるんだけど、中でもロドリゲスの「フロム・ダスク・ティル・ドーン」はこのブログの最初の頃にも書いたんだけど、このストーリー展開の馬鹿馬鹿しさが最高に可笑しい。このノリは確かにアングロサクソン系の薄さではダメだよね。ジョージ・クルーニー(これまた苦手!)とバンデラスだったからだと思うし。
さらにタランティーノの「フォー・ルームス」がすっごく好きなんだけど、これのバンデラスの微妙さがまた可笑しい。これの最高なのはティム・ロスに尽きる。今となってはこの飄々としたティムとバンデラスがどう絡むの?と思うんだけど、こういう手があったかと感心する。オムニバスの1話だけなんだけど、バンデラスの微妙なコメディ部分があるからこの可笑しさが出たんだと思う。しかし良く出来た映画だよこれはっ。

メラニー・グリフィスと結婚してあっという間にパパになりびっくりさせたバンデラスですが、家庭をこよなく愛すオトコでありながらギラギラは健在。だからメラニーが若いセクシー夫に逃げられないために必死。それは理解できるし、いや自分を磨くのはいいことよね(方法には問題ありだと思うけどさ)。
で、そのままファミリーマンになっちゃった彼が進んだ先が「スパイキッズ」シリーズのファミリー映画の数々。監督がこれがまた同じファミリーマンのロドリゲス。仲間だしねぇ。でもそこに落ち着いて欲しくないなぁ~と思ったのが正直なところ。

ヒューマンドラマとセクシーさ振り撒くハードなアクションとファミリー映画と、多彩な面をバランスよくこの10年はキャリアを重ねてきた。年齢を重ねてセクシーさは落ち着いてくるからか、このところセクシー俳優としてはおとなしく目に留まることがなくなったなぁと思っていたのですが、いやいや人間そんなに簡単には変わらないのね。

ここで取り上げたいと思ったきっかけになったのが「ザ・エッグ~ロマノフの秘宝を追え~」。一種のバディムービーなんだけど相手が重鎮モーガン・フリーマン。バンデラスも歳をとったっていっても相手が彼じゃ全然若造。その若造振りを出せるのはバンデラスならではの軽妙さがモノを言ったのだと思う。これを観るちょっと前に「パリより愛をこめて」でジョン・トラボルタとジョナサン・リース・マイヤースのコンビを見たばかりだったの。確かにジョナサンが若造の立場なんだけど・・・なんか初々しくはないのよね。だったらもっと若手を使ったほうが良かったかもと思った。でもフリーマンに対するバンデラスは初々しくもあり、素直に彼には従わないやんちゃさが見え・・・で、してやられる!みたいな展開にこれほど合うとは、ちょっとびっくりした。年齢に関係なく相手役によって自分の役柄をマッチさせられるのはたいしたもんだ。さらにこの役のためか常日頃からそうなのかどうかは知らないが、ジーンズに革ジャン姿の腰の細さにびっくり。足から腰、肩幅まで変わらないの。60年生まれってことは今年50歳じゃん。またまたびっくり!いやぁかっこいいっすよ(笑)。

さらに・・・これからが一番言いたかったことかもしれないんだけど・・・フリーマンにやめろと言われても止めなかった、ヒロインへのアタック、アタックっ♪相手はラダ・ミッチェル演じるロシア女。これまたフェロモンむんむんでバンデラスに火をつける。火がついたら止まらないラテン男。ところが相手が1枚上手で彼女に翻弄される。お預け食らったバンデラスってば・・・獣よ、ケモノっ!がるるるRRRRっってっっっ!(大笑)
その後のベッドシーンの濃いーのなんのって・・・。「ポワゾン」のあんじょり相手の大胆さにもびっくりだったんだけど、今回のもこれで全国公開っていいんだろうか?????
でも・・・いやらしいっちゃいやらしいんだけど、「ポワゾン」の時のような気持ち悪い感じはしなかった(あれは相手があんじょりだったからかもしれないけど・・・)。バンデラスの丸見えお尻はやっぱり細くて、とても御歳50歳には見えなかったっすっ♪
ややも可愛いかもとも思えた役回りのバンデラス。見直してしまったよ。

なんて、観ている自分が歳とっただけかもしれないけどね。どんどん出てくる若手俳優はカッコいいとは思っても惹かれることはほとんどなくなってしまいました。甥っ子とかを見てるように思っちゃったり。もうある程度の年齢で少年っぽさが見えるところに弱いのかもしれないな・・・ふっ。  (なんか淋しいぞ~!)

エリック・クリスチャン・オルセン2009年09月23日 20時43分26秒

ラストキス(2006)
ERIC CHRISTIAN OLSEN(左から2番目)  1977/5/31 USA

コメディ、B級作品がお好きな方なら、この顔はわりと見てるんじゃないかと思うんですが。若手の傍役俳優のひとり。
私の記憶もそのほとんどがコメディ。しかも“おばか”。
なので、ビデオスルー作品がほとんど。日本のふつーの公開作品を中心に観ている方にはとんと馴染みがあるまい。CSやWOWOWなどで未公開作品を観る機会があれば覚えがあるかも・・・みたいな俳優です(笑)。

でもでも、最初に記憶しているのは「ローカルボーイズ」という青春映画だった。サーファーの青年で伝説のサーファーとの出会いで成長していくみたいなストーリー。ほぼ主演でそれなりにシビアな演技もしているけど当然劇場未公開。これからよく見る顔になるかな?と思いつつ、インパクトに欠けると思ったのも事実。
その次に見たのは劇場公開作品の「セルラー」。主演のクリス・エヴァンスの友人のひとり。これで「あ、あいつだ!」と確実に認識したんだと思う。でも、出演時間はたぶん10分そこそこ・・・。まあエヴァンスが孤軍奮闘するストーリーだからねぇ。

そしてそこからイメージを覆される“おばか”作品でお目にかかることになる。ロブ・シュナイダーの「ホット・チック」、「ビール・フェスタ」。未見なのだけどジム・キャリーの「Mr.ダマー」の新シリーズでキャリー張りのおばか振りを発揮しているらしい。その道に結構前向きなのか?

主人公の友人役で非常に印象深いのがザック・ブラフの「ラストキス」。マリッジブルーに陥る花婿の悪友仲間の一人。仲間の中にはケイシー・アフレックもいて、ブラフらしいヒューマン味のある佳作で、友人たちの描き方がいい。監督は温かい作品の多いトニー・ゴールドウィン。

「ライセンス・トゥ・ウェディング」もロマンティック・コメディ・・・主演陣にロビン・ウィリアムズが鎮座するかなりドタバタ系(笑)。ただ監督が「旅するジーンズ~」のケン・クワピス。ロビン・ウィリアムズのこてこてキャラは好きじゃないんだけど押えるとこは押えてる。ロマンスもコメディも青春映画も爽やかな作品に仕上げるクワピスらしい。ここでのオルセンは結婚を控えるヒロインの幼なじみ。彼女の婚約者にとっては面白くない存在。得てしてお決まりのキャラだが、彼の言葉がポイントになったりしてちょっと役得かも。

新作は「サンシャイン・クリーニング」。エミリー・ブラントのチンピラのボーイフレンド。出演時間は・・・。日本公開作品だとこんなもんだ(笑)

一見ハンサムなので、いずれ主演作品も?と最初は思ったのだけどさっぱり! このルックスでコメディだと、大概、主人公の男の悪友の一人か恋敵。いつまでも友人の範囲で目立たないか、最後にヒロインに振られるとか、痛い目に遭うとか、そんなんばっか。
それなりのルックスなんだからいずれは映画で主役も張れる!とブレイクを待っている・・・と本人が思っているかどうか定かではないが、もう30歳過ぎてるし難しそうだなー。
なんてヒドイことばっかり書いてるが、本国ではTVシリーズからキャリアをスタートさせて、現在も映画にTV(「ER」「24」「ヤング・スーパーマン」「トゥルー・コーリング」など人気作品多数)に出演作品が多いし、このルックスだもの米国では固定ファンが結構いる人気者だと思う。

コメディにどっぷり浸かって、時々見せる弾けっぷりはなかなかのもの。やってる本人は楽しいに違いない。コメディに二枚目ルックスキャラは一人は必要不可欠。この位置をキープしていくのも悪くないのかもしれない。
コメディ以外も役の大きさにはこだわらず映画には出演を続けていってくれるといいなと思う。

アントン・イェルチン2009年06月21日 20時29分35秒

チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室(2007)
ANTON YELCHIN  1989/3/11  ロシア

最近、話題作に次々出演で若手の頭角を現してきたアントン・イェルチン。最初は子役で数本、そんなに注目もしてなかったんだけど、その目覚しい成長ぶりにびっくりなのだっ。

珍しい名前だと思ったらロシア人なのね。両親はフィギュア・スケート選手でロシアの全国チャンピオン。その両親に連れられて生後6ヶ月でアメリカへ移住。スケートではなく演技の道に進んだアントン。やはり何かしら表現者としての血を受け継いでいるのかもね。

2001年のデビューは10歳で「ER」などテレビドラマのゲスト出演。
映画は「アトランティスのこころ」でアンソニー・ホプキンズと心を通わせる少年を演じた。結構印象深い役どころだし憶えている人もいるんじゃないかな。私も記憶に残っていた。顔がぽっちゃりした印象だったんだけどそうでもないかも。クリクリ巻き毛のせいかなぁ。

デビュー直後は「15ミニッツ」「マルホランド・ドライブ」などにも出演。モーガン・フリーマン主演の「スパイダー」にも出てたみたい。どれも全然憶えてないけど・・・。再見しようかなぁ。
しかしこうしてみると子役ながらにして個性的な作品、監督作、豪華な共演者と、俳優としては恵まれたスタートを切ったのだね。

そしてそのまま消えてしまう子役も多いんだけどね。それ以後姿を見かけてなかったのでその存在を忘れていたのだけど。今年、突然名前を見かけ、その姿にびっくり。7年も経てば当然ティーン俳優。しかしなかなかカッコよくなってたんだよね、これが。ちょっとジェイミー・ベルみたいな雰囲気もあり・・・。
「チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室」がそれ。タイトルも内容も個性的な雰囲気。共演がロバート・ダウニー・Jr.ってとこも気になった。富豪の息子だが家庭環境が原因でいくつもの名門高校を退学になり、とうとうやってきた公立高校。そこで学校も彼の周囲の人々も、そして彼の人生にも変化が起こる。
一筋縄ではいかないが、基本悪い子じゃない。ティーンネイジャーなりの細やかさが彼の個性とマッチしていた。ロバートとの相性も良くて作品的にもかなり面白かったし・・・。
個性的な作品にキャスティングされた彼。なんか面白い子かもと思った。

ら、今年の押し寄せるSF大作映画のトップを切って公開された「スター・トレック」で見た彼にまたびっくり!
クリクリ巻き毛に強烈なロシア訛り(そうか、ネイティブだもんね)。ちょっと、ちょっと~カメレオン俳優の素質十分。やっぱりこの子は面白い。

そしてそして、真打はやっぱり「ターミネーター4」でしょう。しかもカイル・リース役ときたもんだ。
「ターミネーター」に関しては、マイケル・ビーンの時にも書いたかもしれないが、カイル・リースには思い入れがあって、今回かなり心配だったのだよね。マイケル・ビーンの若い頃がアントン・イェルチン・・・わからん、どうなんだろう・・・って。だって間違っても巻き毛じゃないし(笑)。「チャーリー・バートレット」ぐらいにしてどうにかカイルらしくなるだろうかと。ところがだ、登場シーンはかなり幼く見えてやや疑問だったんだけど、ストーリーが進みキャラクターに重みが増していくにつれて、ちゃんんとカイル・リースになっていくんだな~。瞳の色が同系かもしれない。戦士になりつつある彼、やや淋しげな表情とその眼差しは確かに「ターミネーター」のマイケル・ビーンのカイル・リースを思わせるのよ。このキャスティング、お見事です。
当然、次もあるんでしょうね。楽しみですわ♪
(余談だが、私としてはアントンがマイケル・ビーンで疑問なら、クリスチャン・ベールでエドワード・ファーロングはもっと疑問なんだけど・・・。ニック・スタールの時は散々言われたのにくりべーだとスルーなのね。可哀相なスタール・・・)

さて主だった出演作はまだまだこんなもん。実は見逃していた「アルファ・ドッグ 破滅へのカウントダウン」は他にも注目すべき若手俳優どころがうじゃうじゃ出ているらしく今後鑑賞予定(必須)。オムニバスの「ニューヨーク、アイ ラブ ユー」にも出ていたらしくこれもチェックしないとね。
本人も目指すはカメレオン俳優らしい。期待してるよん♪

イーサン・エンブリー2008年10月23日 00時08分10秒

タイムライン(2003)
ETHAN EMBRY  1978/6/13 USA

人懐っこそうな笑顔。友達にいて欲しいタイプ。主役の柄じゃないけど、脇に彼がいると明るくなるような、柔らかい雰囲気があるのが好きだ。

青春映画で主人公の友人で見かける印象が深いだろうか。若手俳優がたくさん出演する作品で顔を観られるので、学生のイメージが強いのだけど、13歳で子役デビューして20年近くなるベテラン。「白い嵐」の中の少年たちの中にもいたのね。

はっきりと憶えている最初は「すべてをあなたに」。トム・ハンクス監督のやっぱり青春映画。主人公のトム・エヴァレット・スコットのバンドのベースマン。バンドの中でもスティーヴ・ザーンとふたりでコメディパート担当っぽい。ふたりがいつも落ち着きがなくちょこまかしてて可愛い。
そのすぐ後に観たのも青春映画の「エンパイア・レコード」。レコードショップを舞台にリヴ・タイラーやレニー・ゼルウェガーたちの中にいたエンブリーはパンク小僧。これもなかなか可愛い。

さらに「待ちきれなくて…」はジェニファー・ラヴ・ヒューイットが主演の青春ラブストーリー。しかしこれのエンブリーは主演といってもいい。思い続けてきた彼女にプロムの夜に告白しよう!という、青春映画の王道とも言うべきストーリー。しかし、ちょっと切ないラストまでなかなかエンブリーの持ち味が沁みるいいキャラクター。
数ある青春映画の中でもこれは楽しい。ヒューイットが好きじゃないのだけど、エンブリーを観るだけでも存分に楽しめる。
愛嬌たっぷりの善人顔のエンブリーは青春ドラマやコメディにぴったりなんだと思われその手のキャスティングが多いのは納得。

その特徴を逆に活かして「洗脳/狙われたハイスクール」や「インプラント」「モーテル」など、ホラーやサスペンスの出演があるのもまた一興。緊張を和ませる役割はばっちり、また一転して・・・とかも。

久しぶりに姿を見たのは「メラニーは行く!」で、リース・ウィザースプーンの故郷アラバマの幼なじみ。もうチャーミングなキャラクターが微笑ましい。ネタバレしてしまうと彼の役はゲイなんだけど、小さな南部の田舎町でゲイであることの微妙な空気が、エンブリーの演技がちょっとせつなくて絶妙。憎めないキャラ全開でものすごく印象深かった。

他に近作では「タイムライン」の科学者とか。仲間を過去に送り出し、映画の舞台は中世がほとんどである中で、現代に残ってほぼ孤軍奮闘する立場のキャラクター。地味だけどなくてはならない役どころ。一見、頼りにならなそうだけど頑張ってる姿は思わず応援したくなる。そこが大事。エンブリーの持ち味の活かしどころかな。

最新作「イーグル・アイ」でビリー・ボブ・ソーントンの下で働くFBI捜査官として見たのだが、さすがに年齢が青春ものには向かなくなってきましたか、一見してエンブリーと気づかず、地味な感じで新しい一面を見たような。主人公の同僚とか友人とかそういう役が多くなるのだろうが、愛嬌のある顔はそのままなので、これからもうまく個性を活かせる役で見せてもらいたいなと思う。

キャラクターも見た目もちょっとビリー・ボイド(LOTRのピピン)と似てるかも。こういうタイプがいると作品の雰囲気がふんわりと和むと思うの。彼らみたいな人って、主人公の隣や後ろで、ちょこまかとしていてもらいたいと思いません?(笑)

エドワード・ノートン2008年08月24日 19時29分11秒

インクレディブル・ハルク(2008)
EDWARD NORTON   1969/8/18 USA

映画デビュー作の「真実の行方」から度肝を抜く演技で、アカデミー助演男優賞にノミネートされ、ゴールデン・グローブ助演男優賞を手にした、誰もが認める演技力の持ち主。そんな彼を取り上げるのも今更な気もするが、この夏の数あるアクション映画の1本「インクレディブル・ハルク」で、思いがけなく楽しませてもらって、改めて彼に注目してみた。

そう、最初に見たのはまさしく「真実の行方」。初めて見る少年のような俳優はリチャード・ギア相手に一癖も二癖もあるところを見せて、驚愕の結末へ。先行き恐ろしい俳優が出てきたと思ったものである。

しかしながら次に見たのは「世界中がアイ・ラヴ・ユー」。なんとウッディ・アレン作品で歌って踊るノートンだった。作品選びが意外で幅があり、観る者を驚かせながらも、決してハズしてはいないところが面白いというか。
同年に公開されたもう一本の「ラリー・フリント」もびっくりな作品だった。
実在するポルノ雑誌「ハスラー」の創刊者ラリー・フリントの奇抜な半生を描いた作品で、ノートンはラリーの弁護士役。キワモノ演技はウッディ・ハレルソンに任せて、ノートンは機微ある役どころで脇を固める。
この抑え気味の役どころもある意味ノートンの持ち味だと、後々わかってくる。同じタイプが「ファイト・クラブ」。こっちのキワモノはブラッド・ピットが演じた。抑えた役ではあるものの、ストーリーが進むにつれて、彼の役回りが大きな意味を持ってくるところがミソ。かなりの存在感を感じさせるのはノートンならではかもしれない。
嵌るのが当たり前のような心理ドラマはなんて安心して観ていられることか。「アメリカン・ヒストリーX」「25時」など胸を打つ演技だ。

ノートン自身がキワモノを演じたのも勿論ある。「ラウンダーズ」「スコア」など結構キテいるかと。キワモノ的でも中身がそうとも限らないのもまた一捻りあるというか・・・「デス・トゥ・スムーチー」はピンクの着ぐるみを着てコメディ演技を見せ、「キングダム・オブ・ヘブン」では仮面を被り顔がまったく見えないながらも声だけでノートンの存在感は抜群。
そんな存在感は善人だけでなく敵役や微妙な立場に回ることがあるのも頷ける。「ラウンダーズ」「スコア」も「ミニミニ大作戦」もそうだ。
悪役やキーポイントとなる役者が面白いとサスペンスやドラマはさらに面白くなる。

ノートンの演技は映画デビュー以前に相当数の舞台経験から培われてきたもの。加えてイェール大学史学科を卒業したインテリ。父は連邦主席検察官で母は元高校教師。建築家である祖父の仕事の関係で、大学卒業後に大阪に住んでいたこともあるおまけつきの異色の経歴の持ち主。こんな環境に生まれ育ち、見聞きしてきたものがどれだけ彼に影響を与えてきたか計り知れない。
コメディから社会派作品、人間の深層心理を突いた感慨深いドラマまで幅広くこなせるのは納得というもの。
また、そんな彼のことだから俳優としての演技だけではなく、脚本や監督に進出するのも当然の流れだろう。脚本はクレジットなしで「フリーダ」に関わったり、「僕たちのアナ・バナナ」は監督も。

意外だと思った「インクレディブル・ハルク」。CGバリバリの緑の怪物を何故ノートンが?そう思ったファンは多いはずだ。私も懐疑的だった一人なのだが、エンタメ作品は好きなのでとりあえず観ておこうかと・・・。ところがうれしい驚きで、これがなかなか♪
確かに緑の怪物になってしまうとノートンだとは、ほとんど感じられないのだが、ブルース・バナーのキャラクターの深さがかなりのものでノートンのストイック演技は魅力的かと。しかもこれほどラブストーリー色が強いとも思わなかった~。
この「インクレディブル・ハルク」もノートンが脚本を手がけている。意外とロマンティック路線が好みなのか、監督した「僕たちのアナ・バナナ」も言ってみればラブコメディだったし。「インクレディブル・ハルク」の会見で冗談めかして「リブ・タイラーとのキスシーンを書きたかった」と笑ったが、ラブシーンの描き方・・・結構イケるんではないかと思いますよん♪

ラブストーリーというかファンタジーっぽい「ダウン・イン・ザ・バレー」、重厚なサスペンスなら「レッド・ドラゴン」でレクター博士との対決も果たすなど、ジャンルを問わず様々な作品でそれぞれのノートンを見せてくれる。
当り前といえば当り前の実力派俳優。彼のサイトなんか山ほどあるだろうからこれ以上ここで過去作品について細かく語る必要もないだろう。
私が思うのは、彼が次に何をやるのか、意外なチョイスでこれからも驚かせてくれるんだろうし、期待はずれなことはそうそう起こらないだろうということ。
超インテリで、クセモノ俳優で、でもロマンティックなところもあり、喋らせるとチャーミングでインタビュアーを喜ばせる。人間的にも相当頭がいいノートン。ハリウッドでも貴重な俳優の一人として独自の道を進んでいって欲しい限りだ。