デヴィッド・カルーソー2007年08月23日 12時14分27秒

CSI:マイアミ(2002~)
DAVID CARUSO   1956/1/17  USA

オヤジ俳優シリーズは続く。
80年代からわりと目にする意外と面白い傍役俳優だと思っていた。最近はしばらくご無沙汰だがそれもそのはず。現在TVシリーズ「CSI:マイアミ」が好評で5シーズン続投中。映画では傍役でしか見たことがないがこの「CSI:マイアミ」はバリバリの主役。最初に注目され人気が出たのもTVシリーズだったようだ。うーむ、TVで光るタイプの俳優だったってことだろうか~。

この人の特徴はなんといっても燃えるような明るい赤毛。ブロンドと赤毛の丁度真ん中ぐらいの色。優しいんだか怪しいんだかよくわからない中途半端な顔は間違ってもカッコいいとは言えない。でもなんだか気になる。この度合いがTV向き?(笑)
いやいや、決して彼を馬鹿にしているわけではない。実際、最初に見たときから忘れられない印象のまま20年以上記憶に留まっている人なんだからー。

カルーソーのことは映画ファンじゃなくても顔を見ている可能性が非常に高い。地上波でもよくオンエアされる有名な作品に出ているからだ。それは「愛と青春の旅だち」!
リチャード・ギア主演で、あの感動的な(と言われる)ラストシーンの、主題歌とともに超有名なラブロマンス映画だが、そこに彼は出ているのだよ。
ギアと同期の士官学校の訓練生で、あまりの精神の弱さに訓練に耐えられずに一番最初に退学してしまうんだけど、泣きそうな顔でへろへろ訓練に耐えていた彼を覚えていませんかね?なんとこれが彼のデビュー作で'82年公開。

どこかなよっちい男だった「愛と青春の旅だち」。同年の「ランボー」はスタローンを追う保安官であっさり片付けられてしまった。
「死の接吻」では主役を張ったもののこれがまた巻き込まれ型の不運な男で、彼を悪に引っ張り込むニコラス・ケイジのキレ具合にすっかり見所を持ってかれてしまった感がある。
「ボディ・カウント/ヤバい奴ら」では強盗グループの運転手。喧嘩っ早くて仲間のジョン・レグイザモとは犬猿の仲で常に一触即発の雰囲気。ま、当然ロクなことにはならない。この2本は非常にらしいチンピラぶりを見せてくれる。カッコよくなりきれない二線級のチンピラがどうもよく似合う♪

異色なのが「ハドソン・ホーク」と「セッション9」。「ハドソン・ホーク」はコメディだがカルーソーの役はとにかく笑わせる。映画自体はポンコツだがこれのカルーソーは私は一見の価値ありだと思う。この奇天烈な彼を四の五の言わずに見てもらいたい。
「セッション9」はホラー要素の高い作品だが精神異常性が絡み人が次々と狂気に走るといった内容でこのカルーソーが結構キテいる。このシリアスに異常性を見せるのは彼の演技を見るとすればこれが一番かも。

傍役俳優に多い主人公の相棒役。カルーソーの場合は「恋に落ちたら・・・」ではロバート・デ・ニーロの相棒の刑事。「プルーフ・オブ・ライフ」ではデヴィッド・モースを救出するラッセル・クロウの相棒となかなか豪華。どちらも出番は多くないが活躍してくれる部分はかなり頼もしい。
映画でカルーソーがとりあえずカッコいいといえるのは私の知る限りこんなもんかと。しかも当然傍役。それがTVの製作者からするとまたとない逸材だったのかもしれない。

TVMの「ザ・ネゴシエーター交渉人」で主演級の検事役。サスペンスとしていささかもの足りないのはTVMゆえいたしかたないがカルーソーの魅力はそこそこ感じられる。
そして「CSI:マイアミ」のチーフ、ホレイショ・ケイン役へ。
人気TVシリーズ「CSI」シリーズのマイアミ篇で主役のこのホレイショなる男のキャラクターが可笑しい。いや非常にシリアスな内容で決してコメディではないのだが~。日本語吹替版のせいもあるんだろうけど、犯人に対して強烈な憎悪を吐き出すその台詞が毎回笑わせる。カッコいいといえばカッコいいが、なんじゃそりゃ?の感もあり。カッコいいようでいて、なんだか女子供に甘くて妙に人間臭い。何、カッコつけてんの?みたいなわざとらしいカッコよさがいかにもTVらしいキャラでそれがTVファンには大うけなんじゃないかと思われる。(いやほんとに馬鹿になんかしてませんってばっ!)

最近はTVで活躍しているみたいだけどできれば映画で活躍している姿を見たいと思う人はたくさんいるが、カルーソーの場合は、ここまでくると、ホレイショ役を大事にして頑張ってくれ♪と言いたくなる。この役柄のままスクリーンじゃ絶対無理だし、これ以上に彼に似合う役が思いつかないもんね。
シリーズが終了して映画に戻ってきてくれるのならば、そうだなあ「セッション9」みたいな凝った役で始めてもらったほうがいいのかも。面白いクセ者オヤジ俳優であるのは確かなのだ。

テレンス・ハワード2007年04月25日 18時23分33秒

ハッスル&フロウ(2005)
TERRENCE HOWARD  1969/3/11  USA

2006年のアカデミー賞で主演男優賞でノミネートされていたハワード。受賞したのはそっちじゃなくて「クラッシュ」の作品賞だった。式場でのハワードは自信に満ちたオーラが漂っていて、何だかとてもとってもセクシーだった。

彼をはじめて見たのはコリン・ファレルの「ジャスティス」。捕虜として収容されている米軍の兵士たちの間で、人種間の確執によって起こった殺人事件の容疑者になったハワード。誇りを崩さない姿勢を貫くハワードはとても神々しかった。
ファレルとブルース・ウィリスのサスペンスアクションでありながらドラマも織り込んで、ちょっと詰め込み過ぎの感のある作品だが、ハワードの部分はそれに埋もれることなく十分に存在感があった。

最初が印象深かったので、その後に続々と出てきた「ビッグ・ママス・ハウス」「エンジェル・アイズ」「グリッター」「セックス調査団」「バイカーボーイズ」などでもすぐにわかった。傍役としてオファー続々の売れっ子の人気俳優のようだ。
役柄も善人から悪人。金持ちから貧しいチンピラと多彩。コメディからシリアス、インディペンデント系からメジャー作品まで幅広く活躍しているのも頷ける。

「ジャスティス」であんなに神々しかったのに「Ray/レイ」ではいい加減なマネージャー。ハル・ベリー主演の「彼らの目は神を見ていた」でも人間の嫌らしさを漂わせた男だった。
嫌な奴でも目に力があるハワードは迫力があって、ほんとにいたら絶対に近寄りたくないと思った。

2005年は彼にとって素晴らしい年になっただろう。アンサンブルキャストの「クラッシュ」にキャスティングされたハワードの役は、裕福な成功者にもかかわらず黒人であったために警察から不当な扱いを受ける。その時の対応が元で夫婦の間に溝が出来てしまう。微妙な感情の動きを抑えた演技で見せる彼のエピソード部分は、妻役のタンディ・ニュートンとともに見応えのある部分だ。

そしてついに主演の「ハッスル&フロウ」。劇場公開がレイトのみだったので私は泣く泣く諦めたのだけど、チラシやポスターを見た時から、かっこい~!と思っていた。
ポン引きのハワードは馴染みの店にこの町から出た人気ラッパーがやってくると聞いて、止めていたラップを再びやろうと決心。彼に渡すべくデモテープ作りを始めるのだが、自宅をスタジオにして録音していく過程がとてもいい!ヒップ・ホップの世界ってあんまり興味がないんだけど、この時の言葉を紡ぎ出すハワードがとにかくセクシーで見入ってしまった。
物事は簡単にはいかずに落胆するが、その時の彼の表情にも目が釘付けになった。後味がいいと思ったこの作品、一見の価値ありだ。

今、黒人俳優の中で最もセクシー。色気のある俳優だと思っている。演技的にもタイプ的にもデンゼル・ワシントンの後継はハワードじゃないかなと。まだワシントンほどの大きさは感じられないが、この存在感はただものじゃないと思う。

デヴィッド・ストラザーン2007年04月05日 10時29分51秒

激流(1994)
DAVID STRATHAIRN  1949/1/26  USA

デニス・クエイドが快活で豪快なヒーロータイプなら、デヴィッド・ストラザーンはヒーローの脇で頭脳を働かせる沈着冷静なサポートタイプというべきか。大統領ではなく首席補佐官役が似合うようなタイプ。
彼も80年のデビューから堅実に出演作を重ねてきた、ハリウッドに欠かせない俳優の一人だと思う。

最初に彼を認識したのは「激流」でのメリル・ストリープの夫。ストリープが休暇に息子を連れて川下りを計画。ストラザーンは遅れてやってくる。仕事優先で家庭を顧みない彼は、息子からも反発されている。ケヴィン・ベーコン演じる凶悪犯と関わり、ストラザーンだけがストリープたちと引き離されるが、彼の活躍はそこから。なんだか頼りないし観ているこっちがハラハラしどおしだが、ギリギリのところで踏ん張る彼は家族を守る役目を果たしていく。まあ、結局いいとこはストリープに持ってかれてしまうんだけど、そこがストラザーンらしい。アクションをかっこよく決めるヒーロータイプじゃないのだ。

体躯も細身でおよそアクション向きでないのは一目瞭然。アクションらしいアクションは「激流」しか観たことがない。
アクション映画であっても、彼は主人公に電話で指令を出す側とか、一歩引いた立場の人物役が多いと思う。
「スニーカーズ」での彼はロバート・レッドフォードやリヴァー・フェニックスたちと一緒のハイテク・エキスパート集団の一員で盲目のオーディオの天才。彼の静かな佇まいがハラハラ、ドキドキのサスペンスの中でアクセントになっていて印象深い。体を使うより知能や他の能力を働かせるタイプかと。

その存在感はアクション映画に留まらない。若い兵士たちを複雑な思いで送り出す司令官だった「メンフィス・ベル」。子供たちを優しく見守る神父でストーリー上、重要な役目を負った「サイモン・バーチ」。真犯人と裏で繋がる組織の元締めで、自分で手は汚さない冷淡さが渋かった「L.A.コンフィデンシャル」。「ザ・ファーム」では主人公の兄役で、トム・クルーズ演じる主人公の性格を表現するのに一役買った。

「激流」のように、「奇跡の人」「黙秘」「マップ・オブ・ザ・ワールド」「戦場に消えたカメラマン」「ショコラーデ」など、ヒロインや重要な登場人物の夫役でもよく見られ、善人悪人の区別なく演じられるところも魅力。

でも、私としては一生懸命に生きている普通の善き人の方が彼には似合う気がする。一番好きなのは「パッション・フィッシュ」。故郷に帰ってきた生きる気力を失ったヒロインは地元民のストラザーンと出会う。心優しい素朴な彼は彼女に人生を再出発するきっかけを与えてくれる。取り立てて大きなことをするわけじゃないけど、彼のにじみ出るような優しい人柄が伝わってきて観ているこっちも癒されるようだった。
傍役でありながらストーリー展開に静かに一石を投じるような印象的な役どころが多く、地味だけどなんとなく彼の顔を思い出せる人は多いんじゃないかと思う。

その彼がいきなり「グッドナイト&グッドラック」で主演を果たす。ジョージ・クルーニーが監督したこの骨太な社会派作品で実在のジャーナリスト、エド・マローを正義感たっぷりに演じた。モノクロの画面に力強さを秘めた表情で、決め台詞の『グッドナイト&グッドラック』。あの重厚感は彼の長い経験が培った重さそのもの。
今後も渋い役どころで、作品にアクセントをくれるストラザーンに期待する。

デニス・クエイド2007年04月04日 09時02分33秒

イン・グッド・カンパニー(2004)
DENNIS QUAID  1953/4/9  USA

テキサス・ヒューストン出身の彼は、アメリカ南部の男の象徴のような 、豪快さ、快活さを備えた風格で、アメリカ史劇、西部劇、クラシックから現代劇でも青春ドラマ、ヒューマンドラマ、サスペンス、アクション、果てはSFからコメディまで、75年のデビューから30年以上に渡り、善きアメリカ人を演じてきた。ハリウッドに欠かせない俳優の一人だと思う。

私が最初に彼を認識したのが「グレート・ボールズ・オフ・ファイヤー」だったので、パワフルで活きのいい強烈な印象だった(笑)。その後も「ジョーズ3」や「熱き愛に時は流れて」「インナースペース」「D.O.A」「フレッシュ・アンド・ボーン」「アンダーカバーブルース」と続いたのでとにかく熱い男だと思った。
「ライトスタッフ」「ワイアット・アープ」「エニイ・ギブン・サンデー」など、この時、既にアメリカ人が理想とする男の姿を体現していたようだ。「ライトスタッフ」なんてその最たるものかと。

年齢を経てきてその傾向は益々強くなる。[アラモ」「オールド・ルーキー」など実在したのヒーロー的人物などその円熟味を増す役が増えてくる。
善き父親像を求められるようにもなってきた。「オールド・ルーキー」「オーロラの彼方へ」「ファミリー・ゲーム」「デイ・アフター・トゥモロー」「ヘレンとフランクと18人の子供たち」など、理想的な父親が並ぶ。今では十八番といってもいいのでは?父親こそ最高のヒーロー。だとすればクエイドは最も身近な現代のヒーローを体現しているのかもしれない。

2000年あたりから理想の父親役も増えてきたが、現代の病めるアメリカの中年男役が見られるようになってきたのも時代の流れか。「セイヴィア」「エニイ・ギブン・サンデー」「トラフィック」「コールド・クリーク」などは、彼のあの口を横に広げた笑顔がほとんど見られない作品。「ディナー・ウィズ・フレンズ」「エデンより彼方に」などはとても理想的とはいえない、しかし、非常に身近でリアルな男性だ。この年齢になった彼だからこそできる役かも。一見理想的に見えても、抱えているものは普通の人と同じだからだ。

映画ファンなら誰もがご存知と思うが、彼自身もいくつもの問題を抱えては乗り越えてきた。皮肉なことに10年連れ添ったメグ・ライアンとの別離後から、彼のキャリアが華やかになる。
何かふっ切れたものでもあるのか、コメディもやるようになり、彼の演じる中年男の戸惑った表情が結構おかしい。この年齢になってから役の幅が広がるとは恐れ入る。
「アメリカン・ドリームズ」でとうとう合衆国大統領役かと思えばなんとうつ病の大統領。「イン・グッド・カンパニー」では会社の合併で自分の子供ほどの男の部下になってしまう、ミッドライフ・クライシス全開の男など。

平行して「飛べ!フェニックス」のリメイク「フライト・オブ・フェニックス」でジェームズ・スチュアートが演じた機長役などヒーローぶりも健在。スポーツ選手、消防士、学者に大統領、そして理想の父親と、役が多彩で飽きない人だ。
これからも重厚な役から親しみやすい人物まで幅広く、アメリカ人の男を演じていくのだろう。重鎮と言われるようになるまで主演に傍役にその姿を見せて欲しい。

ダニエル・オートゥイユ2007年03月26日 09時48分57秒

あるいは裏切りという名の犬(2004)
DANIEL AUTEUIL  1950/1/24  アルジェリア

2007年元旦に観た「あるいは裏切りという名の犬」で、すっかりはまってしまったダニエル・オートゥイユ。映画自体が男の世界、生き方みたいなものを前面に出した作品だったが、彼の渋さとあの内に秘めた情熱。背中に漂う哀しさ。くーっ、もうどうしようかと思った。(笑)

前から良く見ている人だと思っていたが、その実、彼の30年のキャリアのうち10本も観ていないことに気づいた。慌てて、ぷちダニエル祭りをしてみたもののあまり旧作が見つからなくて、ま、これからの楽しみとしてとっておこうか。
初めて見たのは多分「橋の上の娘」。モノクロバージョンだったと思う。彼のナイフ投げ。的になるヴァネッサ・パラディのせいもあるが、あの官能さはちょっとどきどきした。ハンサムでもない、たくましくもなく、威厳があるでもない中年男。なのに何か惹かれるものがある不思議な人だなと思ったがその時はそこまで。
その次が「王妃マルゴ」。この時の彼はイザベル・アジャーニの夫だが、王のクセになんとも情けなく器の小さな男で、アジャーニのボリュームにかすむかすむ。豪華キャストの中にあってすっかり埋もれてしまって、彼だということを忘れていたくらい。再見して、ああ、そういえばそうだったなあーと。まあ、そういうキャラクターなので、ある意味大正解の演技ではあるのだけどね。

彼の俳優としての演技と作品の魅力が一緒になって胸に迫ってきたのは「八日目」が最初。やっぱり基本的に優しい人物像が似合う人なんじゃないかと。孤独な男が身寄りを無くしたダウン症の青年と一緒に旅を続けていくうちに、彼のピュアな心と笑顔が自分にも伝染していく。オートゥイユの笑顔も優しいのだよね。現実と希望とが微妙に混ざり合うちょっと辛い物語ではあるけれど、この手の題材にしては嫌らしさは感じなかった。オートゥイユの自然な名演もその一因じゃないかと思う。
「サン・ピエールの生命」では、妻が囚人の男に情が移って逃がそうとしたってのに、彼女のその気持ちもひっくるめて愛し、自ら反逆罪に問われることも覚悟する・・・こんないい人いるかい!?と思うくらいすっごくいい人。だけど彼の穏やかな表情を見てると思っちゃうんだな。もしかしたらこんな人も・・・いるのかも?

しかし私が一番好きなのは、「メルシィ!人生」!!!
ここまでコメディで見るのは初めてで、最初はびっくり。まじボケ系キャラクターのオートゥイユ。巻き込まれ型でボーっとしているうちに笑いの渦中にいる。"あの帽子"を被ってパレードする呆然とした表情がなんともいえん。"あの写真"も死ぬほど可笑しい(笑)。フランシス・ヴェヴェール監督の作品ならではの可笑しさなんだが、ここにオートゥイユを起用したセンスは拍手ものだ♪

で、「ある犬」で、どっかーん!となったわけなんだが、彼への興味は今後もますます尽きない。
共演も多いジェラール・ドパルデューやジュリエット・ビノシュと共にフランスの名優に名を連ねる重鎮。多彩な作品がまだまだ。
若い頃のコメディ「ザ・カンニング」シリーズから醜男の農民を演じた「愛と宿命の泉」。近年は「隠された記憶」なんてサスペンスも。
未見の「愛と復讐の騎士」はかっこいいらしいし、エマニュエル・ベアールとのロマンス「フランスの女」「愛を弾く女」などは相当艶かしいらしい・・・。み、観なければっ!!!(笑)