「迷宮の暗殺者」 デヴィッド・アンブローズ2008年02月14日 19時49分06秒

「迷宮の暗殺者」 デヴィッド・アンブローズ
「迷宮の暗殺者」 デヴィッド・アンブローズ
THE DISCRETE CHARM OF CHARLIE MONK
by David Ambrose
(ヴィレッジブックス)

有能な特殊工作員のチャーリーは、何不自由ない生き方をしてきたが、彼の幼い頃からの記憶にある少女に出会ってしまったことから、彼の出生の驚愕の真実が明らかになってくる。

このデヴィッド・アンブローズなる作家はトリッキーでびっくら仰天な展開を得意とする作家なんだそうな。この作品はまさに驚愕という展開だという評判で(それがミステリー好きにとってはその驚愕具合は“バカミス”というそうな)、なんとも気になって手にとってみた。
で、その驚愕具合とやらだが、私の感想は「なんじゃ、そりゃ?」であった・・・。

主人公のチャーリーは政府機関の組織下においてその類稀なる能力を発揮する有能な工作員。それがめっちゃ、カッコいいんで、私としてはボンドの雄姿が記憶に新しいダニエル・クレイグを想定して読んでいたのだが、「なんじゃ、そりゃ?」に出くわして、あまりの馬鹿馬鹿しさにダニエルに申し訳ない気なってきた。頭の中に描いていたカッコいい工作員のクレイグがよもやこんな目に合うとは・・・悲しすぎるったらない。

ほんとに馬鹿馬鹿しい展開で笑ってしまった。「なんじゃ、そりゃ?」の展開はミステリーの枠を超えていた。SF?ミステリーで驚かされる展開は大歓迎だが、SF的な展開されてもあんまり嬉しくないんだよねぇ。しかも、これは酷いって。チャーリーをヒーロー的に見てたのにあんまりだって。これで一気に冷めた。
とかいいながら、いや、ダニエル・クレイグって考えたのがあながちはまっていたりしてとも思える複雑な気分てんこもり・・・。

彼の記憶にあった少女が成長して目の前に現れたわけだが、その彼女、スーザンは医学博士ということで知的美人を思い浮かべた。近年、クレイグと共演した「インベージョン」が記憶にあって、ニコル・キッドマンを思い浮かべたが、読み進むうちに、こんな安っぽいキャラは彼女には気の毒だと思えてきて、ふと浮かんだのがナオミ・ワッツなら妥当かな~みたいな・・・(失礼!)。

読み終わって、呆れかえってしまったんだけど~、最後に解説を読んで大笑いしそうになった。作者のアンブローズは小説家としてやっていく前は映画やTVの脚本家だったんだそうで、代表作が「ファイナル・カウントダウン」や「イヤー・オブ・ザ・ガン」だそうな。び、微妙にB級~(笑)。
アンブローズは製作側の意向で思うように脚本が書けないのが嫌で小説家として独立することにしたんだそうだが、この「迷宮の暗殺者」に映画化の話が来たんだそうだ。で、何をえらそうに、彼は「自分で俳優を選ぶならチャーリーはジュード・ロウに、スーザンはジュリア・ロバーツに」とのたまったんだそうな。・・・ありえねー。
ともすればZ級に陥りそうな危険性の高いストーリー。感動的なミステリーにするには相当の脚色力と演出力が必要とされそうな本作。願わくば映画化は止めてもらいたい。
この映画化という記述を読んだのは日本版で2004年の初版本。おそらく立ち消えになってるのでは?

むちゃくちゃけなしまくってますが、このアンブローズ氏の経歴と言動が余りに可笑しくてウケてしまったので思わずUPしてしまった。どんな話なんだと興味をもたれた方はいらっしゃるでしょうか?純粋なミステリー好きにはあまりお薦めしたくない一冊でありますが、読みたい方はどうぞ。でも責任はもてませんので、念のため(笑)。
エチケットとして極力ネタバレはしておりませんが、読みたくないけど、一体どんな話?とお思いの方は、手にする機会があったら、巻末の作者による『謝辞』をどうぞ。思いっきりネタバレです。
私がダニエル・クレイグに申し訳ないと思いつつ笑ってしまいそうになる理由が、ナオミ・ワッツが妥当だと思う理由がわかって、にんまりしていただけるんじゃないかと~(笑)。

トム・ホランダー2008年02月22日 05時19分21秒

パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド(2007)
TOM HOLLANDER   1967/8/25  UK

久々の俳優の登場であるが英国俳優を取り上げるのは久しぶりだな。ここ最近、英国映画でぴんとくるものがなくて、ハリウッド映画でのマイナー俳優に目を留めることが多かったのだけど、実はホランダーもかなりのハリウッド進出派の英国俳優。クリスチャン・ベールやクライヴ・オーウェンなどの主演級じゃなく、傍役としてハリウッドメジャーにバリバリ出演しているタイプ。

いや、英国でコンスタントに活躍してるんだと思うんだが、日本に入ってこないんでわからないだけ。よく目にするのは、ハリウッドメジャー映画で起用されやすいはまり役があるから。
なんつっても「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」
「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」のベケット卿。憎まれ役の極地。この手の役は度々見られるので記憶にある方もいるんじゃないかと。

最初に彼を見たのは生粋の英国映画。「マーサ・ミーツ・ボーイズ」。アメリカ娘を取り合う3人の英国男の一人で、ジョセフ・ファインズ、ルーファス・シーウェルとどたばたを繰り広げるコメディだった。彼がTV業界人だったのが笑えた。派手なファッションでいかにもな態度。最初はコメディアンなのかと思った。

でも彼が注目される役柄は違った。「プライドと偏見」「パパラッチ」に、先の「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズなど、ほんっとに憎たらしいったらありゃしないキャラクター。力の有無も様々、笑えるキャラもあればマジでイラつくくらいやな奴キャラまで。でも概して好感の持てない役なんだなぁ(笑)。

そして似合うのがいかにも英国人的な佇まい。クラシカルなものから現代まで、彼には一貫したクールさがある。
「リバティーン」「エリザベス ゴールデン・エイジ」での彼は憎まれ役に限らない微妙な冷たさを湛えた味わい。コスチューム物に違和感がまったくないのが英国人俳優らしいところ。「ゴスフォード・パーク」や「プロヴァンスの贈りもの」などの現代物にしてもどこか居住まい正しい英国人をばりばり感じさせるような個性は彼ならではだろう。

「パパラッチ」のように小粒な役だけでハリウッド進出では寂しいけれど、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの出演は決して彼にとってマイナスではないだろうし・・・。彼の今後の行方が危惧されるところだが、英国人俳優はそこで留まらないから安心できる。ハリウッド作品に出ていても、次に英国に戻ってTVシリーズに出たり、小さな英国作品に出たり、自分を見失ってはいないのよね。ああ、よかった♪
マイナーな英国作品はすぐに観られることはないけれど、彼が自分の持ち味を見失わないで活躍を続けてくれれば文句はない。格別二枚目でもないし、主役を張れるタイプではないけれど、息の長い活躍を期待したい英国の性格俳優だ。

ベン・フォスター2008年02月24日 21時37分33秒

X-MEN:ファイナル ディシジョン(2006)
BEN FOSTER   1980/10/29  USA

ちょっといっちゃてる系のキャラが妙にはまる、私には期待の若手の一人、べン・フォスター。
そこそこメジャー作品からインディペンデント作品まで出演の幅が広いので見たことがある人は多いと思うが、やっぱり一番目立ったのは「X-MEN:ファイナル ディシジョン」のエンジェルでしょうな。

もう20代半ばも過ぎてるんだけどこの童顔。はじめて見たのは「リバティ・ハイツ」。99年の作品だがこれが映画デビューか?しかも主演。エイドリアン・ブロディらと共演のなかなかのヒューマンドラマというか青春ドラマというか、いい作品だった。この時16歳くらいだと思うが、今もそんなに顔が変わらない。
まん丸な瞳は澄んでいてちょっと儚げでもある。ここが彼の面白いところ。
キャリアは長く子役経験もあり、早くからプロを目指していた結構本格派。子役といって思い出すのは「ビッグ・トラブル」でのティム・アレンの息子役。バリバリのコメディだが、じたばたする父親のアレンを冷めた目で見ているのが彼らしい(笑)。この時、この子は化けるかもしれんと微かに思っていた。

ら、次に目にしたのは「パニッシャー」。体中ピアスだらけのパンク小僧。だけど仲間になったトム・ジェーンを庇ってジョン・トラボルタの拷問を受ける。なんと顔中のピアスを引きちぎられるっちゅう見るに耐えないシーンで私は絶叫~!
次がまた「ホステージ」で見せた立てこもり犯の怪演!情けない犯人ではあるが、彼のキレぶりは凄い。見た目も最初の頃に見たあどけない少年はどこに?髪型の変化も大きいが印象がとにかくがらりと変わるから驚きだ。

で、究極は先にも挙げた「X-MEN:ファイナル ディシジョン」のエンジェル。上半身裸のまっちろい肌にでかい翼。ミュータントであることに苦悩するも、自分の翼で飛び立つ姿は、出番は少ないが印象深い。

メジャー作品で結構目立つ役が続いたが、そんな作品ばかりでもない。「サラ、いつわりの祈り」「ララミー・プロジェクト」なんて話題の小品があったりして、作品選びが面白い。
歳なりに青春ものもあったようで「恋人にしてはいけない男の愛し方」なんてとんでもない邦題のラブコメディでは、なんとキルステン・ダンストの相手役だった。ごくごく普通のルックスでちょっと安心。「フォーン・ブース」でちらりと見せた姿もまともだったし。
でもサスペンスっぽい「11:14」の彼はまた・・・。

素の時のあどけない童顔は、作品ごとに印象が自在に変わる。これは将来カメレオン俳優の道を行ける面白い逸材と見た。今後が非常に楽しみである。