クリス・クーパー2008年06月28日 07時21分18秒

アメリカを売った男(2007)
CHRIS COOPER   1951/7/9 USA

「アダプテーション」の不思議な役でオスカー俳優となるが、そんな特殊な役じゃなくたって彼の演技は印象深い。近年は1年に1本はお目にかかる人気者ぶりだが、そのどれを見てもその重厚な存在感、確実な演技、安心して観ていられる実力派オヤジ俳優である。

人気者なのか働き者なのか、認識する前から実はあちこちで見ていたらしい。「真実の瞬間」「評決のとき」「真実の囁き」「BOYS」・・・。どんな役だっけ。「マネートレイン」はちょっと怪しい役だったな。「ボーイズ・ライフ」もぼんやり思い出せるかな・・・?

でも一番最初に印象付けたのは「大いなる遺産」のイーサン・ホークのおじさん。成功したホークの元に現れた彼を見たホークの戸惑った表情は・・・それを感じ取ったちょっと悲しい彼の姿。
それから「モンタナの風に抱かれて」のロバート・レッドフォードの弟の寡黙なカウボーイは落ち着いた物腰がすごくいい。
そして「遠い空の向こうに」のジェイク・ギレンホールの頑固な父親。田舎暮らしの封建的な男は息子が将来ちゃんと食べて生きていけるように実直な道を示す。でも男の子が夢を持つ気持ちを本当はわかっている。

「アダプテーション」のなんとも形容し難いキワモノ演技な蘭の不法栽培家。「アメリカン・ビューティー」の頭の硬い、病的なまでに男であることを固辞する、が、しかし・・・の元海兵隊員。こういう役は演っていて面白いし、成功すれば評価も高いけれども、そこを狙った奇天烈な役よりも、前記の地味だけれど、どこにも実在する日常の人間の深みが感じられる人物の役のクーパーの方が私は好き。
こんな夫、こんな父親、こんな男・・・。普通の人の悲哀が滲み出るふとした瞬間の彼の表情に、毎回ぐっとさせられるから。

「シービスケット」の時代に取り残されたカウボーイもその流れからくる役だった。こういう無骨な男がやっぱり似合う。おもてになかなか表れない内に秘めた夢や希望がじんわり見え隠れする。

そんな男の渋さ、重厚さを求められてか、「パトリオット」「ふたりの男とひとりの女」「シリアナ」「ジャーヘッド」と、タイプは違えど、軍人や捜査官、司法関係者役が続々。
「ボーン・アイデンティティー」「ボーン・スプレマシー」での謎めいた彼が相当渋い。“動”の強いアクション映画の中でも彼の静かな存在感が“静”の部分を担って引き締め効果抜群。
「カポーティ」の刑事は封建的な地方刑事にしてトルーマンと不思議な友好関係も持つ。彼らしい彼ならではの役だ。

「アメリカを売った男」の実在の二重スパイ、ロバート・ハンセン役はその最たるものかと。一見お堅い国家組織に属した人間で、実生活では家庭を大事にする優しい夫。しかしその実、国家を裏切る二重スパイでしかも性的倒錯者。険しい面立ちと静かな佇まいが謎めいたキャラクターを見事に体現。雰囲気だけじゃなく台詞やひとつひとつの仕草から感じられるその人物の重みとか演技の確実さは文句なし。
「アメリカを売った男」はここ最近続いた社会派作品の中でも頭ひとつ抜きん出た面白さだったが、彼抜きにこの作品はありえないだろう。

彼の静かさ、無骨さは対照となるキャラクターがいてこそ更に際立つ。「遠い空の向こうに」のジェイク・ギレンホール。「アメリカン・ビューティー」のケヴィン・スペイシー。「ボーン・アイデンティティー」「ボーン・スプレマシー」のマット・デーモン。「カポーティ」のフィリップ・シーモア・ホフマン。「アメリカを売った男」のライアン・フィリップ。バランスを考えると、クーパーが相手となると主演にしろ助演にしろ多少なりとも巧さを押さえた演技者が並ばざるを得ないから作品の質も上がってくるような気がするんだけど。

奇をてらった役ではなく、「アメリカを売った男」のような演技でオスカーを手にして欲しいと私は思うんだけどな。こういうのこそ彼の魅力が十分に発揮されていると思うから。

コリン・ハンクス2008年06月14日 23時51分08秒

ブラックサイト(2008)
COLIN HANKS   1977/12/24 USA

言うまでもなく、トム・ハンクスの息子ですね。二世俳優という重荷を背負い(しかもトム・ハンクスのである)、俳優業をやっていくのは勇気がいることだと思う。子供のうちから子役で使ってもらうことでデビューを果たし、後はパッとしないで消えてしまう人も多いと思われる。
コリンのデビューも子役ではないものの、19歳の時、父トムの初監督作「すべてをあなたに」だったし、次もプロデュースした「バンド・オブ・ブラザーズ」だから、彼も例に漏れず同じ末路を辿るのかと思った。

映画出演はそんなに多くない。彼はその後「学園天国」で主演のシェーン・ウェストの同級生、「恋人にしてはいけない男の愛し方」でベン・フォスターの同級生・・・と似たような役をこなす側ら、TVシリーズ「ロズウェル」のレギュラーを3年に渡り続けたからである。
童顔なせいか二十歳を過ぎても高校生役に違和感なし。「ロズウェル」は観ていないのだが、番組の人気とともに彼は本国では人気を得ていったようである。彼がどう思っているか見当もつかないが、俳優を続けていたなりにやる気はあったのだろうと思うのだけど。
TVのレギュラー出演はある意味、それはそれでよかったのかもしれない。あまり鳴り物入りで映画出演を重ねても、それが彼にとってプラスかどうかは甚だあやしいから。

TVという世界で地味に活動を続けてから、彼は映画に戻ってきた。
「オレンジ・カウンティ」がそれだ。この作品、小品ではあるが、半ば七光りの匂いがしないわけじゃないんだけど。いきなり主演だし、共演の俳優人がとにかく豪華なんだよね。ケヴィン・クラインまでが出てきてびっくりしたわ。
でも作品的にとても面白い佳作。この作品を褒める人は多い。私もキャスト的には勿論のこと、脚本も面白いし、コリンの演技も瑞々しく、等身大の高校生役(笑)は非常に良かったと思う。また真面目な青春映画じゃなくて、コメディ味たっぷりだったのがなお良い。

さてその後に彼が選んだのはこれまた「11:14」という小品。しかもサスペンス。この作品、ちょっと凝った作りが面白い。コメディっぽくもあり、ミステリーっぽくもあり、ややえげつなさも感じる。新人監督の実験作品のようでもある。
日本未公開作の小品が多いコリン。「11:14」も何年も遅れてDVDリリース。これからも埋もれた作品が出てくるかも。

こんな小品が続くのかと思ったら「キング・コング」に彼の姿を見たので驚いた。まあ、そろそろ頃合でもあったというところだろうか?作品選びが彼の考えだけによるものかセンスあるエージェントによるものかわからないけど、巧くバランスをとっているように思う。
ピーター・ジャクソンの「キング・コング」は舞台が30年代。クラシックなスタイルが基本が端整なマスクのコリンによく似合っていた。雰囲気が折り目正しい好青年って感じは、本来の姿なのだろうか?(笑)育ちが良さそうなんだよね♪

そして今年は劇場で彼を見た。「ブラックサイト」でダイアン・レインの同僚を演じる。彼の役はダイアン・レインのキャラクターを表す意味でも非常に大事な役どころで、コリンらしい親しみやすさが効果抜群。サスペンスなストーリー展開の中で痛々しいところもあったけれども、相当の印象を残した。今後の彼の出演作が楽しみになった1本である。

さて現在撮影を終了しているものからこれからの出演予定まで、待機作品が続々あるらしくフィルモグラフィが賑やかだ。彼を取り上げるのはもしかしたら1年後の方が面白いのかもしれないなー。
30歳を過ぎてこれからが映画俳優として本腰を入れてきたということか、俳優は大人の男になってからの方が面白い役がたくさんあることだし、今後が非常に楽しみだ。

最初は似てない!と思っていたけど、最近は、ある瞬間にトムと同じ表情を見せることがあるように思う。ちょっといいかもと思った(笑)。

クリストファー・ウォーケン2007年08月27日 12時37分03秒

デッドゾーン(1983)
CHRISTOPHER WALKEN   1943/3/31  USA

今頃何故なオヤジ俳優シリーズに戻る~。誰でも知ってる超個性派俳優。
私の備忘録でも50本近い出演作品。新旧取り混ぜて1年に4本くらいは見ているだろう。71年のデビューから30年以上のキャリアがあるからこれからもこのペースで顔を見ることになるんではないかと思われる膨大な作品数。

映画を観始めた頃、私の中ではウォーケンは真っ先に悪役俳優に分類された。だって「トゥルー・ロマンス」「パルプ・フィクション」「デンバーに死す時」「ニック・オブ・タイム」「ラストマン・スタンディング」「バットマン・リターンズ」・・・全部なんだもん。007でも「美しき獲物たち」で悪役を演じてるし♪
人間の赤い血が流れてないんじゃないかと思うような青白い顔、冷たい目、深みのある声、その仕草。どれをとっても完璧な悪人。見ていて鬼気迫る感じがして実際に怖かった。絶対に近くにはいて欲しくない、違う世界の人でいてくださいって思った。(笑)
でもー、同時にカッコいいなとも思っていた。美しいと感じることもある。佇まいがスマートで雰囲気のある人だから。
コワイ人にも種類がある。身も凍るようなクールでスマートなタイプと真逆の見た目も中身もイカレちゃってるコワイ人。最近のウォーケンはこれが続いているような。
「デンバーに死す時」で既にその兆候はあったけど、「スリーピー・ホロウ」「ランダウン」「カンガルー・ジャック」「ステップフォード・ワイフ」など見るからにヤバいわるわる男ぶり全開。上品さが消えてクールなカッコよさをかなぐり捨ててる。「アメリカン・スウィートハート」「隣のリッチマン」「もしも昨日が選べたら」なんかひたすらイカレちゃってる役でどうしちゃったのかと思った。
すっかりエキセントリックな役を得意とする名バイプレイヤーの位置を確立。

基本的には上品な顔立ち。一見して高価とわかる衣装が似合ってしまう育ちの良さが漂う上流階級の人間らしく見える。
しかしながら熱心なステージママのもとで演技やダンスを学び幼い頃からTV番組で子役として活躍していたそうだ。その後、ブロードウェイデビューを果たし、アクターズスタジオ出身でもある。素質の上に長年積んできた経験の賜物で個性派としての演技が巧いのは当り前かも。

エキセントリックな役がずば抜けて凄い印象になったのは間違いなく助演賞でオスカーを受賞した「ディア・ハンター」のせいだろう。健康な普通の若者がベトナムの体験で心に大きな傷を負い、行き着いた先の狂気を孕む姿は衝撃的。もともと繊細そうな雰囲気を湛えているのでそのギャップの激しさはよりショックが大きかった。

そうなのだ、とても繊細そうな雰囲気がウォーケンにはある。76年「グリニッジ・ビレッジの青春」でも線の細そうな学生だったし、近年の「マイ・ボディガード」でデンゼル・ワシントンを支える友人。「ラスト・マップ真実を探して」の父親など優しさを感じさせる人物もとても印象深い。彼の演じる傷ついた過去を持つ複雑な心情を抱えた人物はとても胸を打つ。
特にお薦めしたいのが「デッドゾーン」。SFでありながら社会派サスペンス、ラブストーリー、ヒューマンドラマでもある感動的な作品。スティーヴン・キング原作の希少な傑作映画の1本だ。事故で意識不明の状態から5年後に目覚めた彼に備わっていた不思議な力。この5年の間に婚約者も失い、備わった超能力に悩み、一変した人生を受け止めて使命を感じて戦う主人公を演じるウォーケンが切なく、見ていて苦しくなるほどだった。

そしてウォーケンの珍しいロマンチックロール「潮風のサラ」シリーズ。児童文学が原作のTVMで主演はグレン・クローズ。
カンザスで農場を営むウォーケンは数年前に妻に先立たれる。子供を抱えて家事もままならない彼は新聞に再婚相手募集の広告を出してサラ(クローズ)がやってくる。「潮風のサラ」では海辺育ちで当時にしては自立している女性の彼女が保守的な土地とウォーケンたち家族に受け入れられるまで。「続・潮風のサラ」で結婚して暮らし始めた彼らを大旱魃が襲い、家族がバラバラになる。
児童文学ゆえ丁寧な作りの優しい感じがするヒューマンドラマだがクローズとウォーケンの関係がとても良い。妻を亡くした痛みからなかなか立ち直れない彼は彼女の人柄に触れるうちに癒され愛するようになっていく。特に、続編で離れ離れになっている時、そして再会した時のウォーケンの愛情溢れた表情はびっくりだ。情熱的な面は見たことがあるがラブストーリーで見たのはこれがはじめて。セクシーだわん。
ちなみにこのふたり、「ステップフォード・ワイフ」でのおっかしな夫婦役で再共演。ちょっと笑える。

「潮風のサラ」は90年代の作品。現在渋みを増してすっかり重鎮的なウォーケンだけどもっとこの手のロマンチックロールなんて見られないもんだろうか。ジェレミー・アイアンズみたいな~、なんて。
サスペンスからヒューマンドラマ。おっかしなオヤジだろうがなんだろうが役を選ばずに精力的に仕事をこなしているウォーケン。なんでもこいというか楽しんで演じている余裕なんじゃないだろうか。これからもまだまだ期待していいよね♪

ケヴィン・クライン2007年08月20日 19時54分35秒

デーブ(1993)
KEVIN KLINE   1947/10/24  USA

今頃何故なオヤジ俳優シリーズ。(笑)
彼も映画を観始めた頃から本当にすっかり馴染みのベテラン。しかもオスカー受賞俳優である。

本当に馴染みの俳優だから何が最初だったか定かじゃないが、多分「遠い夜明け」かな。いや違った「フレンチ・キス」だな。メグ・ライアンの相手にしてはじじむさいなと思ったんだった。しかも国籍不明な怪しさ(笑)。映画としては単純に面白かったと記憶するもののこのちょび髭の男は何者か?と思ううちに「遠い夜明け」と「ワンダとダイヤと優しい奴ら」を観たのでケヴィン・クラインという俳優がますますわからなくなったー。
でも今思えば、そこそこロマンスもコメディもシリアスな社会派までこなせる芸達者な俳優のそれぞれの一面を立て続けに見たようなものだ。

クラインの出演作は作風も時代もかなりランダムに観たので本当にバラエティに富んだキャラクターで楽しいと思ったのは確か。
「ソフィーの選択」「アイス・ストーム」「卒業の朝」のような堅いドラマがあるかと思えば、「イン&アウト」「ソープディッシュ」「デーブ」「殺したいほどアイ・ラブ・ユー」といったコメディがある。
最初は「ソフィーの選択」や「遠い夜明け」でリーアム・ニーソン同様に説教臭い俳優だと思ったし、巧い人だからドラマがじんとくるのは当然。だが、この人のいいところはその巧さがコメディで活きていること。コメディがなかなか評価されない アカデミー賞で彼がオスカーを受賞したのが「ワンダとダイヤと優しい奴ら」というのが象徴的かと。
大学で演劇を学んだ後にブロードウェイでデビュー。基本がしっかりしていてコメディが得意とくればその先は実力派の道を一直線みたいな優等生俳優だね。

好きな作品はいろいろあるけど「海辺の家」の彼がとてもいい。元妻役のクリスティン・スコット・トーマスとの間の切なさも、息子役のヘイデン・クリステンセンとの演技には胸を掴まれた。
「五線譜のラブレター」のコール・ポーター役も素晴らしい。人間ドラマもだが歌ってみせるのもロマンスもスマートで且つ情熱的でセクシーなのだ。しかも男女問わずにね♪

これをアップするきっかけになったのはずっと未見だった「わが街」。ローレンス・カスダン監督のドラマで、幸福と不幸は背中合せ、ひどい世の中でも人はこれを繰り返しながらもとにかく生きていく。カスダン監督のラストに光が見えるような人生を描くドラマにクラインはぴったりはまる。監督とは相性がいいのだろう。「再会の時」も非常に秀作のドラマだが、ここから始まって「シルバラード」「殺したいほど・・・」「フレンチ・キス」もジャンルはバラバラだがどれもカスダン監督作である。

すっかり父親役が板についたドラマが定着する年代になっても、セクシーさが見える役も笑わせてくれるコメディも健在なのが嬉しい。評判は様々だけど「ピンクパンサー」のベタさ加減なんて私は好きなんだけどなあ。
でもいくらコメディでも「ワイルド・ワイルド・ウェスト」みたいな悪趣味映画はもう絶対やめてね~♪

彼の奥さんは日本でも人気を博したフィービー・ケイツ。おしどり夫婦なのは勿論、二人の子供たちともども「アニバーサリーの夜に」では共演。息子のオーウェン・クラインは「イカとクジラ」でローラ・リニーの息子役を演じたがこれが素晴らしい!将来期待できる逸材と見た!

公私共に順風満帆のクライン。この人の俳優人生はどこにも穴がなさそうだー。
インタビューでは知的に軽妙なトークを見せる。いずれ重鎮といわれるようになっても、俳優としても素顔も楽しい人でいてね~♪

ギャスパー・ウリエル2007年06月04日 00時08分21秒

ハンニバル・ライジング(2007)
GASPARD ULLIEL  1984/11/25  フランス

久しぶりに、この子、可愛いっ♪と言いたくなる若手俳優の笑顔に出会ってしまった。ハグして頭をなでなでしてあげたくなるような笑顔。おばさんは嬉しいよ。(何、言ってんだ)

ギャスパー・ウリエルは注目のフランス人若手俳優。パリ郊外の出身で大学の映画科に学び在学中からTVに出演し始める。
映画では「ジェヴォーダンの獣」にも出ていたようだが記憶にない。今なら絶対に判ると思うけど再見しなければなるまい。

はっきりと認識したのは「かげろう」。これのウリエルは青春期の丸刈りの少年。時は戦時下。誰に庇護されていたかもわからぬ一人で生き抜いてきたかのような道徳を知らぬ野生児のよう。少年と言うにはかなり大人びた表情で、エマニュエル・ベアールは彼にどうしても惹かれていってしまう。大人びているだけでなく彼には色気があった。ベアールじゃなくても惹かれるかもね。(笑)

「ロング・エンゲージメント」の彼はやや幼い。幼さ、純情さ、脆さといったもので包まれた少年のような彼だからこそ、戦場を逃げ出したかったことにも、恋人のオドレイ・トトゥがどうあっても彼を探し出そうとすることにも、説得力が得られた。
ジャン・ピエール・ジュネとトトゥの「アメリ」コンビのどこか幻想的な雰囲気に彼はぴったりだった。

そんな少年少年してた彼だがその幼さにも色気にもそんなに惹かれていたわけではなかった。将来が期待できる美形俳優だと思っていた。
私が最初にドキッとしたのは「パリ、ジュテーム」の一篇“マレ地区”でのことだ。「ロング・エンゲージメント」から2年は経つのだろうか、確かに美しく成長している。しかも逞しくなってる。はじめて見る青年っぽいウリエル。
彼が見せたのは仕事先で出会った一人の青年がどうしても気になって、どきどきしながら話しかける・・・という。この青年が気になって何度も振り返ったり、たどたどしく話しかけたりするウリエルが可愛い♪話しかけられた彼はウリエルのあの笑顔に心揺さぶられたに違いないのだ。
別にゲイ話が好きな方ではないが、ガス・ヴァン・サントの美少年、美青年の撮り方は非常に美しく、魅力的なのはどの作品を観ても感じられる。今度は是非、このコンビで長編作品を期待するのは私だけではないはずだ。ちなみに本人たちの間でもその気持ちはあるようなのでいつか実現する可能性もありかと!

そして話題にならざるを得ない「ハンニバル・ライジング」。何と言ってもウリエルが演じるのはハンニバル・レクターの青年期。いかにしてレクターが誕生したか・・・だものねえ。いろいろ期待されていただろうと思う。
正直言って作品には物足りなさを感じ納得しにくいのだが、ここではそれはいいだろう。なんにせよウリエルは文句なしに良いのだから。少年期の面影を残す線の細い柔らかな表情と、復讐に駆り立てられる時の後のハンニバル・レクターに繋がるあの表情。繊細さと知性と狂気を孕んだ人格を覗わせる演技は評価されてもいいと思うし、実際そういう評が多いようだ。美しいだけじゃなくて、彼の持つ雰囲気やこれから益々磨きがかかるだろう演技力に絶対期待したい。

「ハンニバル・ライジング」で一気に注目度が高まりインタビューなどの素顔もあちこちで見られるが、すっかり大人っぽくなって見目麗しいフランス青年のくせに、まあ、その笑顔のキュートなこと♪ぼっこりできるエクボは、実は昔犬に噛まれた傷痕なのだとか。でもそれがチャームポイントになってるようなー。

ガス・ヴァン・サント監督や「ハンニバル・ライジング」の主演などハリウッドとの距離も近くなり、これからの露出度が高くなることは確実かと。楽しみなのだ♪