エイドリアン・ブロディ2008年03月16日 21時57分37秒

戦場のピアニスト(2002)
ADRIEN BRODY   1976/12/23  USA

特徴のある容姿ではあるが、お世辞にもカッコいいとは言い難い。長身で手足が、おまけに顔まで長い。その顔はなんだか青白く、ちょっと見た目に病的。
彼が一躍メジャーに躍り出たのは、言うまでもなくオスカーまで獲ってしまった「戦場のピアニスト」のおかげ。監督のロマン・ポランスキーが彼を抜擢したのは「シン・レッド・ライン」の彼を見たからだったとか。

「戦場のピアニスト」のロマン・ポランスキー、「シン・レッド・ライン」のテレンス・マリックはじめ、「わが街セントルイス」のスティーヴン・ソダーバーグ、「サマー・オブ・サム」のスパイク・リー、「ブレッド&ローズ」のケン・ローチなど、話題の監督作への出演が多い。一癖も二癖もあるこれらの監督に目を留められる彼の魅力はなんなんだろう?

「エンジェルス」や「死にたいほどの夜」なんかにもでているらしいが、私の記憶にある一番古い彼は「シン・レッド・ライン」。ジム・カヴィーゼルとともに戦場で戦うことに疑問を持つ兵士を演じ、無名ながらも強い印象を残した。
その彼を「サマー・オブ・サム」で見つけたときはNYのパンク野郎だったので驚いた。しかしながらいわれなき差別と疑惑で暴行されるユダヤ人の彼は、わけもわからずボコボコにされて怯える瞳がリアルだった。
次は「リバティ・ハイツ」でこれまたユダヤ人の若者なんだが、ちょっとコメディでもあり十分ヒューマンドラマっぽい青春ドラマ。ちょっとシリアスなテーマを含んだ作品にリアルな雰囲気をもたらすのが彼の持ち味なのかもしれない。

もともとメジャーな俳優じゃないのでTVMの出演作もあるようだが、「戦場のジャーナリスト」なんて小さいながらも社会性のある作品なのがこれまた彼らしい。「ブレッド&ローズ」なんてケン・ローチ作品でもまた貧しい労働者のために組合を作ろうと奔走する運動家など、こんなに続くと彼自身も作品選びにポリシーがあったのかもしれないなと思える。

その独特の容姿から変な役も多く「人質」の不気味な犯人や「ダミー」なんて腹話術師なんて絶対変!どっちが人形だ?って感じで、ほんとに不気味でおかしい・・・。
メジャーになってからも「ヴィレッジ」や「ジャケット」なんかはその独特な加減を見込まれたキャスティングだと思う。言ってみればかなりの性格俳優。
「戦場のピアニスト」もそうだけど、究極の状態に置かれるような体力的につらそうな役の時は、彼は用意周到に準備をして撮影に望むそうで、なりきり演技を見せるのだそうだ。
狂気を見せたり危機感迫る演技があの不気味な容姿にプラスされるわけで、性格俳優道をまい進している模様。

中には「マリー・アントワネットの首飾り」なんて?な作品もあるが、メジャー進出後は「キング・コング」でヒーローを演じるなど出演作品の幅は未知数。
新作の「ダージリン急行」はウェス・アンダーソン作品。あのひょろっとした姿がアンダーソンの“ゆるい”笑いに見事にマッチ。そうか、この手もいけるのか~と感心。あの細く長い手足で列車を追いかける姿の可笑しいこと。なんか、ぬぼーっとした長い顔はコメディ向きといえばコメディ向き。なりきり演技ばかりじゃなくて、力の抜けたブロディもなかなか面白い。

カッコよくもないけど、見たら忘れないこの顔は、これからも多種多様な作品でお目にかかることだろう。
?なのもあれば「ダージリン急行」のように新しい面白さに出会えることもあるだろうし、ハリウッド大作から話題作、問題作、マイナー作品まで、今後も貴重なキャラクターを演じてくれる、今後とも必要な俳優なんじゃないかと思う。