リチャード・ジェンキンズ2009年07月25日 23時06分15秒

扉をたたく人(2007)
RICHARD JENKINS  1953/12/2 USA

うって変わってオヤジ俳優の登場です。傍役俳優の中でも名だたる人。映画好きならよく見た顔のはず。
今回UPするにあたって、過去作品を考えたら、あまりにたくさん見過ぎていて、どれがどれだったかわかんなくなってることにショックを受けた・・・。
あれもこれも・・・絶対見てるのに、え~っ、どんな役だったろう??困ったな~。最近のとあまりに役が強烈だったのしか浮かんでこないのが哀しい。このブログを書くのも限界か~?

印象としては、その見た目から実年齢以上に見えるやも。下手すると好々爺の感じも否めず。
出演作品は傍役の鑑ともいうべき、ジャンルを問わず社会派、ドラマ、コメディ、ホラー。役柄も主人公の上司、同僚、父親、隣人・・・。善人、敵役、お堅い役人から得体の知れない変人まで選り取り見取り。キャスティング・ディレクターの引き出しには欠かせない人材であろうと思われる。

さて心もとない私の記憶を辿るとなると、最初は「アメリカの災難」かもしれないかなぁ。主人公が自分の本当の両親を探し訪ねて回るのだけど・・・そのうちの一組の夫婦・・・じゃない?途中で出会った警官とかじゃないよね、え?(笑)
もしくは「カウチ・イン・ニューヨーク」の似非カウンセラーと化したジュリエット・ビノシュの患者の一人?
もしくは「リトル★ニキータ」のリヴァー・フェニックスのワケありのお父さん。それとも「あなたに降る夢」のゴーストの一人。

しかし本当はもっと前に見ていたはず。記録によると「キルトに綴る愛」(誰の夫だ?)に始まり、「ハンナとその姉妹」「シルバラード」「イーストウィックの魔女たち」「君がいた夏」「シー・オブ・ラブ」「ミスター・ベースボール」「アンダーカバー・ブルース」「エディー/勝利の天使」「目撃」「インポスターズ」「ランダム・ハーツ」「ヒマラヤ杉に降る雪」「モッド・スクワッド」・・・。ここまでが85年のデビューから90年代まで。絶対認識はしてるので役柄を忘れてしまっている模様。この作品群、すごいよねぇ。人気傍役俳優の生き様そのもの。

作品のジャンルは問わないみたいだが、私の印象はどちらかと言うとコメディ色が強い。なかでも忘れられないのは「ふたりの男とひとりの女」の警官。ジム・キャリー主演作なのでコテコテのコメディなんだけどジェンキンズがまたけったいなキャラクターだったので記憶されている。なんか見た目にもとんでもないことになっていたしねぇ。いやぁ、強烈でおもしろかったなぁ。
その後も「ジュエルに気をつけろ!」「ギリーは首ったけ」「バーバー」「キャンパス・クレージー」「ディボース・ショウ」「12人のパパ」「ハッカビーズ」「ディック&ジェーン 復讐は最高!」・・・やっぱりコメディが多いよ。オバカなものも微妙にブラックなものも両方いけるから楽しいよねぇ。その傾向で最近見られたのは「バーン・アフター・リーディング」かと思われるが、でもこのキャラは一途に恋する男の思い込みが見ていて可笑しい、でもちょっと哀しいかもねぇ。この微妙な複雑さがジェンキンズの見せ所かもしれない。

2000年以降もコメディだけじゃなくシリアス、社会派、ドラマからサスペンス、ホラーにも続々登場。「チェンジング・レーン」「Shall we Dance?」(踊ってたっけ?違うよねぇ?)「迷い婚 すべての迷える女性たちへ」などなど。
はっきり憶えているのは「ザ・コア」「キングダム/見えざる敵」の役人と、「スタンドアップ」のシャーリーズ・セロンの頑固な父親。頑固だからこそ彼の起こした行動がぐっとくる。これが今まで見た中で父親役の最たるところかなぁと。
同じ父親でも彼の寡黙で堅そうなイメージがものすごく合っていた「ブロークン」は異質。彼の個性をこんな風に使うこともありなのか~とちょっと感心した1本だった。

私の記録だけでも85年からの出演本数は23本。映画だけでも年に数本の頻度で精力的に仕事をしてるのに2001年にスタートしたテレビシリーズ「シックス・フィート・アンダー」にシリーズ終了の2005年まで出演してるんだから恐れ入る。総主演時間はそんなに多くないが、その役がとにかくキワモノ的!主人公たちの父親なんだがこれが死んじゃってるんだもの。単なる回顧シーンだけじゃなくて彼らの妄想というかゴーストというか・・・シンでもなお家族への影響の大きさが伺えるってことか・・・ただでさえキワモノな家族のキワモノな父親。私もファーストシーズンしか観てないのだけど、一見の価値有かもしれない。

「スタンドアップ」や「ブロークン」でちょっと役の重みや印象が傍役の域を超えてきたなぁと思えなくもないのだけど・・・そしたらなんと2009年のアカデミー賞に主演男優賞ノミネートに彼の名がっ!びっくりしたのなんのって、しかも主演ってとこがね♪
先日、日本でも公開され好評につき1ヶ月たった今も延長公開中の「扉をたたく人」。なんとなく毎年同じ講義を続けなんとなく著書を執筆してきた大学教授。ニューヨークで出会ったアフリカ出身のミュージシャンとの関係のうちに、彼の中で何かが変わっていく。
この作品、社会派であり、二人を繋ぐ“ジャンベ”が奏でるアフリカンミュージック、彼の心情の変化、そしてそこはかとなく感じられる情愛(これがいいんだ!なかなか色っぽいのよ♪)・・・と、小品ながら残るものが大きい佳作。主演にジェンキンズを持ってきたところに大きな成果を感じる。すごいすごい!彼の魅力をこんなに感じられる作品ははじめてだ。確かに主演の力は大きいねぇ。

主演作が1本当ったところで、彼の俳優人生は変わりはしまい。これからも彼なりに面白いと思う作品にビシバシ出てくれていくことだろう。なんか「扉をたたく人」と「バーン・アフター・リーディング」でラブストーリーがイケるところも見せてくれたし、今後がますます楽しみだわ。
この歳のオヤジ俳優に色香を感じられるなんて、自分も歳をとったかとも思うけど、でも・・・このオヤジってば、なかなかステキよ♪(笑)

アントン・イェルチン2009年06月21日 20時29分35秒

チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室(2007)
ANTON YELCHIN  1989/3/11  ロシア

最近、話題作に次々出演で若手の頭角を現してきたアントン・イェルチン。最初は子役で数本、そんなに注目もしてなかったんだけど、その目覚しい成長ぶりにびっくりなのだっ。

珍しい名前だと思ったらロシア人なのね。両親はフィギュア・スケート選手でロシアの全国チャンピオン。その両親に連れられて生後6ヶ月でアメリカへ移住。スケートではなく演技の道に進んだアントン。やはり何かしら表現者としての血を受け継いでいるのかもね。

2001年のデビューは10歳で「ER」などテレビドラマのゲスト出演。
映画は「アトランティスのこころ」でアンソニー・ホプキンズと心を通わせる少年を演じた。結構印象深い役どころだし憶えている人もいるんじゃないかな。私も記憶に残っていた。顔がぽっちゃりした印象だったんだけどそうでもないかも。クリクリ巻き毛のせいかなぁ。

デビュー直後は「15ミニッツ」「マルホランド・ドライブ」などにも出演。モーガン・フリーマン主演の「スパイダー」にも出てたみたい。どれも全然憶えてないけど・・・。再見しようかなぁ。
しかしこうしてみると子役ながらにして個性的な作品、監督作、豪華な共演者と、俳優としては恵まれたスタートを切ったのだね。

そしてそのまま消えてしまう子役も多いんだけどね。それ以後姿を見かけてなかったのでその存在を忘れていたのだけど。今年、突然名前を見かけ、その姿にびっくり。7年も経てば当然ティーン俳優。しかしなかなかカッコよくなってたんだよね、これが。ちょっとジェイミー・ベルみたいな雰囲気もあり・・・。
「チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室」がそれ。タイトルも内容も個性的な雰囲気。共演がロバート・ダウニー・Jr.ってとこも気になった。富豪の息子だが家庭環境が原因でいくつもの名門高校を退学になり、とうとうやってきた公立高校。そこで学校も彼の周囲の人々も、そして彼の人生にも変化が起こる。
一筋縄ではいかないが、基本悪い子じゃない。ティーンネイジャーなりの細やかさが彼の個性とマッチしていた。ロバートとの相性も良くて作品的にもかなり面白かったし・・・。
個性的な作品にキャスティングされた彼。なんか面白い子かもと思った。

ら、今年の押し寄せるSF大作映画のトップを切って公開された「スター・トレック」で見た彼にまたびっくり!
クリクリ巻き毛に強烈なロシア訛り(そうか、ネイティブだもんね)。ちょっと、ちょっと~カメレオン俳優の素質十分。やっぱりこの子は面白い。

そしてそして、真打はやっぱり「ターミネーター4」でしょう。しかもカイル・リース役ときたもんだ。
「ターミネーター」に関しては、マイケル・ビーンの時にも書いたかもしれないが、カイル・リースには思い入れがあって、今回かなり心配だったのだよね。マイケル・ビーンの若い頃がアントン・イェルチン・・・わからん、どうなんだろう・・・って。だって間違っても巻き毛じゃないし(笑)。「チャーリー・バートレット」ぐらいにしてどうにかカイルらしくなるだろうかと。ところがだ、登場シーンはかなり幼く見えてやや疑問だったんだけど、ストーリーが進みキャラクターに重みが増していくにつれて、ちゃんんとカイル・リースになっていくんだな~。瞳の色が同系かもしれない。戦士になりつつある彼、やや淋しげな表情とその眼差しは確かに「ターミネーター」のマイケル・ビーンのカイル・リースを思わせるのよ。このキャスティング、お見事です。
当然、次もあるんでしょうね。楽しみですわ♪
(余談だが、私としてはアントンがマイケル・ビーンで疑問なら、クリスチャン・ベールでエドワード・ファーロングはもっと疑問なんだけど・・・。ニック・スタールの時は散々言われたのにくりべーだとスルーなのね。可哀相なスタール・・・)

さて主だった出演作はまだまだこんなもん。実は見逃していた「アルファ・ドッグ 破滅へのカウントダウン」は他にも注目すべき若手俳優どころがうじゃうじゃ出ているらしく今後鑑賞予定(必須)。オムニバスの「ニューヨーク、アイ ラブ ユー」にも出ていたらしくこれもチェックしないとね。
本人も目指すはカメレオン俳優らしい。期待してるよん♪

ジョゼフ・ゴードン・レヴィット2009年06月09日 00時03分34秒

恋のからさわぎ(1999)
JOSEPH GORDON-LEVITT(左)  1981/2/17 USA
- DAVID KRUMHOLTZ(右) -

久しぶりの俳優ネタは子役時代から見ているキャリア十分の若手俳優。ジョゼフ・ゴードン・レヴィットです。若手っていってももう30歳直前なのか。成長しても童顔なのでそんな歳には見えないんだけど。イメージ的にはマイケル・アンガラーノと同じタイプ。マイケルよりちょっとだけクール・・・かな?・・・ほんのちょっとだけね。

子役時代の作品は「リバー・ランズ・スルー・イット」のクレイグ・シェファー(ブラッド・ピットの兄役)の少年時代。「エンジェルス」の主人公の野球少年。「陪審員」のデミ・ムーアの息子。「ホーリー・ウェディング」ではパトリシア・アークェットと結婚する(!・・・勿論、コメディです)。

「陪審員」で15歳。子役というよりティーン俳優になりつつあるが、童顔のせいか役柄より子供に見える。弱々しい苛められっ子タイプかも。最初のティーン映画はホラーの「ハロウィンH20」。ジョッシュ・ハートネットの同級生かな?実ははっきり憶えてないんだけど確かブギーマンから逃げ回る生徒たちの一人だったんじゃないかな~(笑)。

そして「恋のからさわぎ」。シェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』をベースにしたラブコメディ。今となっては貴重なヒース・レッジャーが主演作品。彼はこの作品がお気に召さなかったようだけど、この手の作品の中ではキャスティングが面白く、映画自体も非常に出来が良いと思う。ヒロインはジュリア・スタイルズ。ガブリエル・ユニオンもいるしスクールカウンセラーがアリソン・ジャーニー。そして何よりこれのデヴィッド・クラムホルツが最高なんだ♪
ふたりまとめて苛められっこ。これがまたよくお似合いで。18歳のはずだけど中学生くらいにしか見えない。見た目もキャラクターもいかにも苛められそうなんだこれが。

ところが次に見たのが“Havoc”(邦題「アン・ハサウェイ/裸の天使」)というティーン映画というか無謀なティーンネイジャーの青春映画といったところ。ヒスパニック系ギャングの子達ともめる白人の少年役。前作から5年以上経ってると思うがあの童顔からしたら結構おとなっぽくなっていた。といっても役柄はティーンみたいだけど本人は24歳くらい?やっぱり童顔か(笑)。

日本で見られる作品がその後暫らくないのだけど、1996年から2001年までTVシリーズにかかっていたようだ。その間に成長していたのね(?)
「ルックアウト/見張り」が見ている中では一番最近の作品で2007年。突然大人の男になっていました。しかしながら役柄が結構深みがあってこれがまた嵌っていてよかったのだ。有望なホッケー選手だった青年は彼女を楽しませようと、ある理由で夜の道を消灯のまま車を走らせて大事故に遭う。頭部を激しく打って記憶が長続きしない後遺症が残る。友人を死なせた自責の念と記憶が途切れるためからくるイライラも募り普通の生活をするのが難しいが、親元を離れリハビリを続けながら夜間に銀行の掃除の仕事をしている。そんな彼が自分の勤める銀行への強盗計画に巻き込まれるというストーリー。自分の生き様にイラついていた彼が、ある日健常者らしい扱いに素直に喜びを見出したものの、それが強盗をもくろむ一団だったと知り、揺れながらも自分の心を見つめなおし、記憶の途切れを利用して彼なりの逆襲に打って出る。

こう言ってはなんだが、正直、今まで若手俳優として興味は持っても、その演技に注目するものはなかったのだが、今回初めて面白い役者になったのかも?と思えた。
これから30代だし、面白い役で見られることが今後どんどん増えてくるのかもしれない。要注目♪

余談だが、この「ルックアウト/見張り」。レヴィットに近づき強盗を企てる主犯がマシュー・グードなのだがなんとスキンヘッド!好青年でしか見たことがなかったのにいきなり犯罪者だしこの容貌だし、最初は気がつかなかった。だけどセクシーな低い声で彼とわかりびっくり。セクシーな全裸も披露して(後姿ですけど)違った魅力を発見。そんなこともありこの作品、期待してなかった割に面白く観られて得した気分になったのだった♪

Eyes down ! (May '09)2009年05月31日 11時26分07秒

「お買いもの中毒な私!」 5/30公開

予告でヒュー・ダンシーのキュートな魅力炸裂な気がして期待してました。ダンシーは予想に違わずキュートでござったよ。しかしながら作品自体はいまいち・・・。
途中まではおばかっちょなヒロインが嫌味なくありがちなおばかっちょでそれなりに魅力的に見せていたのだけど、中盤以降になるにしたがって、なんだか胃が重くなるようないや~な感じが。最後は予定調和でハッピーエンドには違いないんだけど、なんかしっくりこない。劇場内には泣いてる女の子もいたけど、別に泣くほどでも・・・。
カップル的にはそんなに悪くないのに、アイラ・フィッシャー単独だと、だんだんイライラしてきて・・・やっぱり好みじゃないんだろう(笑)
ヒュー・ダンシーの役柄は売り上げが落ち込んでいる経済誌の救世主として送り込まれた若手編集長。その実体はNYの名士を母に持つ名家のご子息。パーティのためにめかしこんだプラダのタキシードがまあ良くお似合いになりますこと。彼を観たい方にはお薦めには違いない。
この映画には他にもジョーン・キューザック、クリスティン・スコット・トーマス、ジョン・リスゴー、ジョン・グッドマンと映画好きには馴染みの米英の名優が揃っていて、そういう目で観ても楽しい。
・・・なだけに、なんだかしっくりこない後味の悪さが惜しい。
私だけかもしれないけどね。


「スター・トレック」 5/30公開

米国で大評判の劇場版「スター・トレック」の最新作は主要登場人物の若き頃の物語。
クリス・パインがカーク船長!ってところが私にはミソ。さらに予告で確認できただけでもブルース・グリーンウッド、カール・アーバン、エリック・バナ。面白そうだと思ってチェックしたら、アントン・イェルチン、サイモン・ペッグ・・・。これは観るしかないでしょー。実はまだ未見でして、今日これから観るのですがね。
一人注目している新しい俳優がひとり。若き日のスポックを演じるザッカリー・クイント。彼はドラマを観ている人なら知っていると思うTVで活躍中の俳優。有名なのは「HEROES」のサイラーだと思うが、これが最悪の極悪キャラ。独特なルックスをしているが、なるほどスポックの若い頃を演じることになるとは、なんとなく納得できるような。非常に楽しみである!

追記:
米国で熱狂するほどハマれはしないけど、それなりに楽しめました。
クリス・パインもアントン・イェルチンも良いし、ザッカリー・クイントはお見事!
びっくりしたのは、またもや異形の者だったエリック・バナ。原形を留めていない~。いつになったら出てくるのかなと思ってしまったよ。もうこの手の役はよせーーー!

グラン・トリノ2009年04月29日 17時59分34秒

グラン・トリノ GRAN TORINO
2008 米 監督:クリント・イーストウッド
クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、アーニー・ハー、クリストファー・カーニー、ジョン・キャロル・リンチ

頑固で気難しいウォルトは妻に先立たれた後、二人の息子の家族との折り合いも悪く、隣のアジア系の一家も快く思っていなかった。ある日隣の娘スーを黒人に絡まれたところを助けたのと、彼女の弟タオが彼のグラン・トリノを盗み損ねたのがきっかけで彼らとの関係が変わってくる。

この作品を語るのにネタバレは避けられません。ご容赦ください。

クリントがこれが出演最後といわれている話とか全然知らずに観たのですが、そうかぁ・・・と、今それを知ってなんだか考えてしまいます。
ストーリーだって、「世界最速のインディアン」みたいなレースの話かと思っていたくらいですから、びっくりでした。むしろそれがよかったかな。

クリント作品を観倒してるわけではないですが、長い俳優人生を生きてきて、これが今のクリント・イーストウッドなのかなと思った次第です。
彼の西部劇を思わせられました。ごめんなさい。正直言いますと「許されざる者」はあんまり憶えてないんですけど、でも何故でしょう。彼の西部劇を思わせるのは。

彼の今を思わせると思ったのは、暴力に対する贖罪もですが、戦争に対する彼の考えも顕れていると思ったので。硫黄島2部作の考えがここにも出ているように思いました。

家族の描き方はちょっと辛いものがありますね。タオの存在が彼のおばかっちょな孫の一人であったらまた感じ方は違うのだろうなとも思ったのですが、あれはマイノリティじゃなければいけなかったのかもとも思うし・・・はっきりはわかりませんが。

暴力に対する報復は暴力しか生まないのでしょう。それを示したかったのかな?というご意見があるのに、それはそうかなと。観てる時は後のことまで考えてるのかな~と私も思ったのですが、スーが暴行されたことで受けた衝撃と怒りと罪の意識と・・・それが血まみれの拳のまま呆然としている時に彼の頬を涙が伝ったのに、もう涙腺が壊れました。これで彼の言いたいことがわかったような。最後まで観ればそれがよりよくわかるのですが。

暴力に対する贖罪なのかとは思うものの、彼がやってきた暴力映画の数々に対する贖罪・・・となると、ちょっとそれは・・・と私は待ったをかけたくなります。
そうなのだとしたら仕方のないことですけれども・・・でも、数10年前の「ダーティハリー」シリーズや当時の戦争アクション映画は当時のエンタメ映画として楽しめる映画として最高の時代だったと思うのです。今の時代として戦争を取り上げて娯楽アクションを製作するわけにはいかないでしょう。暴力を単純に娯楽作品として出すことは出来ないでしょう。でも確かにあの時代でしかありえない映画としての数々の傑作だと思うのです。それを贖罪という形でばっさり切り落として欲しくないような、決してあなたが罪に思うことではないのだと言ってあげたいような気がするのです。

でもこの先どれだけの作品を残すか主演作があるのかないのかわかりませんが、後代、映画人のクリント・イーストウッドを知るのに「グラン・トリノ」は観ておくべき1本になるだろうなと思いました。