愛より強く ― 2007年05月21日 21時10分25秒

愛より強く GEGEN DIE WAND
2004 ドイツ・トルコ 監督:ファティ・アキン
ビロル・ユーネル ジーベル・ケキリ
人生に絶望して自殺未遂を起こしたジャイト(ユーネル)。保守的なイスラム教徒の家族から逃れるために、やはり自殺未遂のふりをしたシベル(ケキリ)。ふたりは精神科クリニックで出会った。結婚だけが自由になる唯一の手段と考えた彼女は、ジャイトに自分と結婚してくれと頼む。彼は同意し、愛のない結婚、同居生活が始まった。
舞台はドイツのハンブルグ。トルコ系ドイツ人が主人公の話は初めての体験。イスラム教徒の女性の窮屈な環境の現代劇がここまでリアルに感じられたのは私には初めて。同じトルコ系だったためにジャイトは家族に結婚を認められ、シベルは自由を満喫し、ジャイトもいつしか生きる力を見出していく。
これほど“粗暴”という言葉がぴったりな、そしてそれがこれほどセクシーに見せてしまう俳優を見たのは初めてだ。熱く激しくそして静かな憂いのあるビロル・ユーネル。トルコ人俳優はもちろん初めて。マチュー・アマルリックの甘さとジェラール・ランヴァンの男臭さが混在したような。無骨だけどどこかソフト。もの凄く魅力的。しびれる~って感じっ♪
ジャイトは熱い血が流れる激しい男だ。怒りも喜びも感情表現が爆発的。触れただけで火傷しそうな男っていうのはこういう男を言うのだろうか?結婚を迫るシベルに付き纏われてブチぎれて怒鳴り散らしてはバスから放り出される。イライラが爆発して部屋中の物をぶん投げる。シベルに恋した喜びが溢れた時だって・・・何もグラスを拳で叩き潰さなくたっていいじゃんよ~。割れた破片で傷ついた手が血まみれになってるのに嬉しくて満面の笑みを湛えている・・・。あまりの極端さに私は何度か笑ってしまった。
が、しかし、この粗暴で激しい性格が災いしてふたりは引き離されることになるのが悲しい皮肉。
ふたりとも新しい生き方を見出すために出逢ったはずだった。お互いに今までにない喜びを知るきっかけになる相手のはずだった。愛のない結婚生活だけではなくなるかに見えたのに。運命はふたりを引き離した。
激しいラブシーンやおびただしい流血と暴力的描写が色濃いが、ふたりのやりきれない絶望や自由を貪ろうとする切羽詰った感情の表現であって犯罪的なイメージとは程遠い。
ふたりとも痛みを持ってして感情を実感せずにはいられない悲しい性なのだ。そこがふたりとも同じだから分かり合えるはずだった。痛みも喜びも分かち合えるはずだった。
イスタンブールで再会した時のふたりの甘さ。見つめあう表情の柔らかさ。これは引き離される前にふたりの間に交わされるはずだったもの。あまりにも切ない。
怒り、喜び、哀しみ、痛み、愛しさ、寂しさ・・・様々な感情がスクリーンから溢れ、観ている者に投げつけられる。
このラストでふたりが手にした感情はどれだったのだろう?観ている私が受け止めた感情はなんだったんだろう?
2004 ドイツ・トルコ 監督:ファティ・アキン
ビロル・ユーネル ジーベル・ケキリ
人生に絶望して自殺未遂を起こしたジャイト(ユーネル)。保守的なイスラム教徒の家族から逃れるために、やはり自殺未遂のふりをしたシベル(ケキリ)。ふたりは精神科クリニックで出会った。結婚だけが自由になる唯一の手段と考えた彼女は、ジャイトに自分と結婚してくれと頼む。彼は同意し、愛のない結婚、同居生活が始まった。
舞台はドイツのハンブルグ。トルコ系ドイツ人が主人公の話は初めての体験。イスラム教徒の女性の窮屈な環境の現代劇がここまでリアルに感じられたのは私には初めて。同じトルコ系だったためにジャイトは家族に結婚を認められ、シベルは自由を満喫し、ジャイトもいつしか生きる力を見出していく。
これほど“粗暴”という言葉がぴったりな、そしてそれがこれほどセクシーに見せてしまう俳優を見たのは初めてだ。熱く激しくそして静かな憂いのあるビロル・ユーネル。トルコ人俳優はもちろん初めて。マチュー・アマルリックの甘さとジェラール・ランヴァンの男臭さが混在したような。無骨だけどどこかソフト。もの凄く魅力的。しびれる~って感じっ♪
ジャイトは熱い血が流れる激しい男だ。怒りも喜びも感情表現が爆発的。触れただけで火傷しそうな男っていうのはこういう男を言うのだろうか?結婚を迫るシベルに付き纏われてブチぎれて怒鳴り散らしてはバスから放り出される。イライラが爆発して部屋中の物をぶん投げる。シベルに恋した喜びが溢れた時だって・・・何もグラスを拳で叩き潰さなくたっていいじゃんよ~。割れた破片で傷ついた手が血まみれになってるのに嬉しくて満面の笑みを湛えている・・・。あまりの極端さに私は何度か笑ってしまった。
が、しかし、この粗暴で激しい性格が災いしてふたりは引き離されることになるのが悲しい皮肉。
ふたりとも新しい生き方を見出すために出逢ったはずだった。お互いに今までにない喜びを知るきっかけになる相手のはずだった。愛のない結婚生活だけではなくなるかに見えたのに。運命はふたりを引き離した。
激しいラブシーンやおびただしい流血と暴力的描写が色濃いが、ふたりのやりきれない絶望や自由を貪ろうとする切羽詰った感情の表現であって犯罪的なイメージとは程遠い。
ふたりとも痛みを持ってして感情を実感せずにはいられない悲しい性なのだ。そこがふたりとも同じだから分かり合えるはずだった。痛みも喜びも分かち合えるはずだった。
イスタンブールで再会した時のふたりの甘さ。見つめあう表情の柔らかさ。これは引き離される前にふたりの間に交わされるはずだったもの。あまりにも切ない。
怒り、喜び、哀しみ、痛み、愛しさ、寂しさ・・・様々な感情がスクリーンから溢れ、観ている者に投げつけられる。
このラストでふたりが手にした感情はどれだったのだろう?観ている私が受け止めた感情はなんだったんだろう?
コメント
_ かえる ― 2007年05月24日 13時04分40秒
_ めかぶ ― 2007年05月24日 23時12分33秒
私がビロルにしびれたのは予想できました?さすがかえるさん(笑)。
びろるはまだしも映画自体にこれほどぐさぐさくるとは~これは思いがけなくツボでした。我ながら意外。
こんなに痛々しくて、激しい人たちって本来は苦手なのに、なぜなんだろう???
ビロル新作は8月ですね。らじゃっ♪
びろるはまだしも映画自体にこれほどぐさぐさくるとは~これは思いがけなくツボでした。我ながら意外。
こんなに痛々しくて、激しい人たちって本来は苦手なのに、なぜなんだろう???
ビロル新作は8月ですね。らじゃっ♪
_ takbout ― 2008年05月21日 16時50分33秒
ドイツ語を習っている甥っ子に薦められ見ました。
なかなか凄い映画ですよね。
予想どおり、少し重い感じがする映画でしたが、気がつくと夢中で見てました。(笑)
>ビロル・ユーネル
>もの凄く魅力的。
同感です。
出所してきた時のサングラス姿はかっこよかったです♪
なかなか凄い映画ですよね。
予想どおり、少し重い感じがする映画でしたが、気がつくと夢中で見てました。(笑)
>ビロル・ユーネル
>もの凄く魅力的。
同感です。
出所してきた時のサングラス姿はかっこよかったです♪
_ めかぶ ― 2008年05月25日 23時42分45秒
おお、takboutさん。
ビロルに注目していただけましたか。
ドイツ映画で彼を見つけたら教えてくださいね。
なっかなか出演作品にお目にかかれないんですー。
ビロルに注目していただけましたか。
ドイツ映画で彼を見つけたら教えてくださいね。
なっかなか出演作品にお目にかかれないんですー。
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_ かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY - 2007年05月24日 12時56分21秒
パンクは死んじゃいない!映画のパワーに魂が震える。
痛烈にハートをえぐられて。ココロが大動脈出血。
ドイツのハンブルクに住むトルコ系移民のジャイトとシベルの物語。R-18!
とびきり魅力的なラインナップだった4/29公開の東京ミニシアター作品。その中で、私が最も期待に胸を膨らませていたのは何を隠そう、第54回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞したこの『愛より強く』だったわけで。(2番目に楽しみだったのは僕コレ。3番目のブロ・フラはやや消化不良に終わり。) そして、期待は裏切られず!! 1973年生まれのトルコ系ドイツ人ファティ・アキン監督の才能に出逢えたことが嬉しいよー。『太陽に恋し...
痛烈にハートをえぐられて。ココロが大動脈出血。
ドイツのハンブルクに住むトルコ系移民のジャイトとシベルの物語。R-18!
とびきり魅力的なラインナップだった4/29公開の東京ミニシアター作品。その中で、私が最も期待に胸を膨らませていたのは何を隠そう、第54回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞したこの『愛より強く』だったわけで。(2番目に楽しみだったのは僕コレ。3番目のブロ・フラはやや消化不良に終わり。) そして、期待は裏切られず!! 1973年生まれのトルコ系ドイツ人ファティ・アキン監督の才能に出逢えたことが嬉しいよー。『太陽に恋し...
この監督の「太陽に恋して」は片やPOPでこれも是非観てほしいのだけど、DVD化していないんですよね・・・。
モーリッツ主演でビロルもちょろっとあやしく登場しているのに
ビロル出演の公開待機作品は、去年のカンヌ映画祭でクロージング上映された『トランシルヴァニア』です。
シアター・イメージフォーラム)にて8月公開予定。
旅に出た主人公の女は謎めいた男と出会うお話だそうですが、その謎めいた男役!