インヴィンシブル/栄光へのタッチダウン2007年07月04日 16時55分13秒

インヴィンシブル(2006)
インヴィンシブル/栄光へのタッチダウン INVINCIBLE
2006 米 監督:エリクソン・コア
マーク・ウォールバーグ グレッグ・キニア エリザベス・バンクス マイケル・リスポリ ケヴィン・コンウェイ

1976年。ここ何年も低迷を続けるNFLのフィラデルフィア・イーグルス。新監督に就任したヴァーミール(キニア)は異例のトライアウトを実施。不況が続くフィラデルフィアの労働者、30歳のパパーリ(ウォールバーグ)は仲間たちの後押しでトライアウトに参加。彼の資質と今のチームに足りない気骨を感じたヴァーミールによってパパーリのプロへの挑戦が始まった。

主人公のヴィンス・パパーリは実際にフィラデルフィア・イーグルスで活躍した選手で、彼の人生を描く実話の物語。これと似たやはり実話で、デニス・クェイドが30歳を超えてメジャーリーガーになった男を演じた「オールド・ルーキー」が私は好きなんだけど、これまた夢を現実にした人物の物語で観る人に元気を与えてくれる映画だ。しかしながら「インヴィンシブル」のほうは日本未公開だったからびっくり。絶対日本人ウケしそうなのになあ。アメフトってところが日本人向けじゃないと思われたのかもしれないが、ああ、勿体ない!

実在の人物の成功物語だとは知っていたがフィラデルフィアと聞いて、あれ?と思った。そう「ロッキー」である。公開されたのも76年。「ロッキー」を体現している人が現実にいたのだ。フィラデルフィアでは「ロッキー」の公開と同時にパパーリも一躍話題の人となり、今でも伝説の有名人。フィラデルフィア・イーグルスファンに彼を知らない人はいないとか(笑)。

で、映画でパパーリを演じたのはウォールバーグ。貧しい労働者からNFLのプロフットボーラーになる男を演じるのに彼ほど相応しい人はいないかも!失業し妻にも去られて失意のどん底で打ち沈む表情もだし、まあフィラデルフィアの路地で泥まみれになって仲間とタッチフットボールに興じたり、夜は仕事で小さなバーのカウンターに立つ姿なんて似合うこと似合うこと。
そしてそこから仲間の期待を一身に背負って風当たりの強いプロチームの中で自らの力を発揮していくなんて、実にマークらしい演技炸裂なことこのうえない。マークを知るには是非とも観て欲しい作品だと思う。

ここ最近の作品でアクションやスマートな雰囲気が実にカッコよかったマーク。今回はそんなスマートなカッコよさは見られない。カッコよさの質が違う。一番感じたのは人々の期待というプレッシャーと戦う姿。ギリギリのところで踏ん張っている普通の男の頑張る姿だ。それがもっとも感じられるのが彼が走るシーンだ。
「ロッキー」さながらフィラデルフィアの町を走る走る。チームの練習でも試合のシーンでも、歯を食いしばって一生懸命に走る。彼の一番の武器はスピード。走ることが彼の力だから。それしかないから、それを知っているから彼はとにかく一生懸命走る。
そんな走る彼の姿。これがかなりぐっとくる!人が走る姿ってもともと美しいものだけど、彼の場合は己のすべてを賭けて走っているから、彼の精神や気骨といったものすべてが現れているから胸に迫ってくるのだ。

パパーリを信じてチームに残した監督のヴァーミールを演じたキニアも良い。低迷のチームを託された監督の責任というプレッシャーは大変なものだろう。そこで素人のパパーリを起用するという決断は大きな賭けだったに違いない。自分の決断と責任というプレッシャーの間で揺れる心情を見せるキニアの微妙な表情。強い人間のイメージとは程遠いキニアの魅力の見せどころともいえる。

ついでになっちゃうがこういう作品に欠かせないのがヒロインの存在。実際にパパーリの現在の妻となるジャネットと出会って惹かれあう。パパーリはプロになることを優先するために一度は彼女を諦めようとする。
ちょっとしたおまけのストーリーで脚色かもしれないがこの彼女のキャラクターがいい。NYからやってきたよそ者の彼女は熱狂的なイーグルスファンの男たちの中でNYジャイアンツのファンであることを堂々と公言するじゃじゃ馬。非常に元気で魅力的な彼女を演じたのがエリザベス・バンクス。「スパイダーマン」「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」でのチョイ役、「シービスケット」のジェフ・ブリッジスの妻など。クラシカルな感じが多い美人だけど、元気で可愛い。マークの相手にぴったりだった。ヒロインがいいと作品の魅力もアップする。彼女は注目だと思う。

最近、当りの少なかったDVD鑑賞では久々のヒットだった。こういう作品に出会えると嬉しいんだよねー。