「憤怒」 G・M・フォード2006年01月18日 23時07分58秒

「憤怒」G・M・フォード
「憤怒」G・M・フォード
FURY by G.M.Ford
(新潮文庫)

映画原作ではないのだが映画化されてもおかしくないくらいの出来だったので、映画化希望。誰か権利買いに動いてないのかなぁ。
冗談みたいな名前のこの作者は最近の人らしくまだそんなに作品がない。日本では現在3冊。「憤怒」はフォードにとってふたつめのシリーズの1巻め。アメリカでは4巻めが出たそうだ。

基本的にサスペンスだがキャラクターが非常に魅力的なので映画向きだと思う。書店で裏を読んで下さい。サスペンス好きの人ならきっと手が伸びると思う。お薦め。

さて本題。想像力逞しい私は映画化されている本なら登場人物に役者の顔を思い浮かべて読むのはもちろん、そんな予定のない作品にまで勝手にキャスティングして映画化された気分になって読んでしまう。
その作品の登場人物がいかに魅力的かどうかにもよるが、大概それがマッチすると途端に遅々として進まない私の読書スピードが速くなる。「憤怒」はそれが顕著に表れた作品だった。

主人公フランク・コーソはフリーのライター。緻密な取材で社会的な暴露ネタや未解決事件を独自に追うなど過去にはNYで認められたもののわけありで今はシアトルの港で船住まい。
そのシアトルで起こった連続レイプ事件。犯人は逮捕されて死刑執行も決まったそんな時、有罪を決定付けた証人の女性がコーソを訪ねてきて証言は偽証だったと告白。死刑執行まであと6日。コーソの真犯人探しが始まる。

コーソが非常に魅力的な人物で対人関係を築くのを苦手とし、自分が表ざたになるのを極力嫌うがその実とてもチャーミングな男だ。見た目は長身でがたいがしっかりしており黒髪の長髪をポニーテールにしているらしい・・・が私はこの部分を却下(笑)。私がイメージしたのはトーマス・ジェーンである。黒髪をブロンドにした程度でそんなにイメージは変わらないと思う。「パニッシャー」の主人公をもっとソフトにした感じと思えばいいだろうか。

コーソは人間嫌いだが女もあまり得意じゃない。NY時代に大間違いな婚約をしてダメになった経験がある。そんな彼が今回の事件を追う仕事で相棒に選んだカメラマンのメグ・ドアティ。
彼女もまたわけありな女性で過去の呪縛から逃れられずに厭世のきらいがある。コーソと一緒に事件を追ううちになかなかいい関係になってくる。あまり女っぽくないがストレートな性格で内にこもるコーソの内面に突き刺さるように入り込んでくるところが小気味良い。そんな彼女にコーソも打ち解けてくる。
メグの見た目は長身で、わけありでほとんど肌を隠した服装で全身黒づくめのことが多い。長い黒髪のストレート。化粧もアイメークに黒を使うなど結構きつめ。が、私としてはこれもだいたいでどうでも良い。マリア・ベロをイメージした。ブロンドで髪もそれほど長くはないが、「コヨーテ・アグリー」のあねご肌の活きのいい女性の感じがぴったりな気がした。

この二人のコンビは時にはコメディかと思うような部分もあり、スリリングな展開を見せるサスペンスの中で長い目で見ればラブストーリーのようにも読めるほんとに魅力的な人物なのである。シリーズ2作目まで読了。次が非常に楽しみなのだが米国でも人気を博しておりまだしばらくはこのコンビの活躍が読めると思うと嬉しい。

初出:2005/7/2(土) 午前 9:19