カンバセーションズ2007年04月09日 14時58分42秒

カンバセーションズ(2005)
カンバセーションズ CONVERSATIONS WITH OTHER WOMEN
2005 米 監督:ハンス・カノーザ
アーロン・エクハート ヘレナ・ボナム・カーター

NYのホテルのバンケットルーム。妹の結婚式のパーティーで、壁際に所在なげに立っている女(カーター)のもとへ、男(エクハート)がシャンパングラスをふたつ片手に近づいていくところから二人の長い夜ははじまる・・・。再会した男と女は元恋人同士。パーティーのお開きに背中を押されるように、ふたりは女の部屋に向った。それは必然?

この映画を語るのにネタバレはどうにも避けられません。ご容赦ください。

最初のエクハートのシャンパングラスの持ち方と、歩いてくる姿のカッコよさからして、もう私はこの映画にのめりこんだ。ラブストーリーの場合、主演の二人が気に入るかどうかでまず決定的な評価が決まってしまう私。「カンバセーションズ」は・・・完璧だった。(笑)

この映画、最初から最後までの画面分割映像がひとつの話題になっているのだが、私はさほど気にならなかった。最初こそ、おっ?と思ったものの、今の台詞に片方の画面が過去の情景を映すなど、面白いセンスが随所で観られる。
だけどもしも、これがなかったとしても、とにかく私はこの二人の"会話劇"が好きなんだと思う。
音楽のセンスもとってもいい。使用されたのはフランスの女性シンガー、カーラ・ブルーニのナンバー。劇場では求めなかったものの後でどうしても気になり、結局探しまくって買った、使用曲が収録されたCD「ケルカン・マ・ディ~風のうわさ」はお薦め。

10年ぶりに再会した男と女。NYにいる男は独身で恋人がいて、女はロンドンに医者の夫と彼の娘が3人。お互いの状況も、何故、彼女がここにきたのかも“会話”するうちに知っていく。懐かしさなのか・・・、まだ想いがくすぶっているのか・・・、ふたりの中にあるそれぞれの"揺れ"は、パーティーがお開きになっても、そのままそこで離れることを拒否する。

二人の間に交わされる会話と、二人のひとつひとつの動作が、どきっとするほどリアルで、観ているこちらが、わが身に起こっているような照れ臭さ、恥ずかしさ、居心地の悪さを憶えるようだ。何度、心がざわついたり、口の中で笑いを噛み締めたことか!

くすぶる想いを止められなくて、とにかくこの場では彼女を求められずにいられないストレートで情熱的な男。
昔話をしてその頃のロマンスを思い出させようとする。女の体に自分の知らない傷があることに腹を立てる。シャツを脱いだ自分を見た女に太ったと言われて傷つき、すぐに着直したくせに、自分は女に昔と違って肌が乾いているなんてことを言う。彼女に届いている留守電のメッセージを聞かずにいられずとうとう聞いてしまって、彼女の夫の声に激しく嫉妬してしまう。女がバスルームにいる間中、面と向かって言わなかった想いを、最後の悪あがきのように大声でしゃべりだす。

これから起こるだろうことを自分が止められないことをわかっているから、必死に言い訳を探している女。
男がシャツを脱いだ体を見て、傷つくだろうとわかっていながら太ったと言う。照れて、おどけながら自分で脱いでベッドに誘う。身を任せながらも、ひっきりなしに会話を続けようとする。事が終わった後、バスルームに閉じこもって夫に電話してしまう。夫と子供たちの写真を見る男に向って、釘を刺すように彼らの話をする。

夫への電話でも、男の恋人からの電話に出てしまうというアクシデントでも、女は嘘をつき、平静を保ち、この一夜に一応の決着をつけて、朝早くに夫の元へ帰っていく女。残された男はこれから起こるであろう恋人とのひと悶着が待っている。
女は何事もなかったように問題なく夫に迎えられるだろうが、男のほうはきっとうまくはいかないだろう。

この映画のコピーは「男はズルいロマンチスト、女は罪なリアリスト」。男は感情ストレートで過去の恋の再燃を望み、女はそんなことはありえないと理性を貫き、一夜限りのロマンスに身を投じる。

でも、私は直感的に、女も実はかなりぐらぐらと揺れているに違いない!・・・と思ったんですけどねぇ。
なんか私は、「男はズルいロマンチスト、女は罪なリアリスト」っていうこのコピーにどうしても納得がいかないのだ。女だってロマンチストだ!と言いたいのだ。まるで女はこういうことがあってもサラリと切り抜けてやってのけることができる!男はそうはいかないからキビシイよね。みたいなのは一方的だ!と反論したいのだ。

この後、また出会ってしまうことがあったら、例えばそれが今度はロンドンに男がやって来て、なんてことがあったとしたら、同じことが繰り返されると思う。男はそれを望んでいることは間違いないし、女もそれを拒否できない(しない)ことはわかっているから。
(そうしたことで、さらにその後(将来的に)がうまくいく、いかないかはまた別の話だけど)

・・・と思ってたんだけど、男がロンドンに行くことはない、か。だとしたら、女は自分で振り切ったくせに、くすぶった気持ちを持ったままでいるんだわ。どこかで期待しながらきっとずっと報われない。
ここで女がロマンチストになったとしたら、結局ものすごく苦しむことになるのか・・・。女がリアリストでいなければならないのは、苦しみを回避するための最良の方法。だからなのかもしれないなあ。これこそ必然かも・・・。

はあ~、今、これを書いてても居心地悪いのに、DVDが出たら即行で買って、また、ざわざわさせられながら観ちゃうんだろうな。ほとんど自虐的。(笑)

コメント

_ たかこ ― 2007年04月09日 23時57分24秒

>このコピーにどうしても納得がいかないのだ
あぁ…。女がさっさと忘れられるというのはタテマエのような気がします。というかみんなそうではない。
かえるさんとこでも読んだけど、女は学習してるんだ、と。
>女がリアリストでいなければならないのは苦しみを回避するための最良の方法。
これかなーり納得です!
大体理性で何とかしてるのは男のほうだと思う!ロマンチストぶってても仕事や自分の現実を最優先するのは男じゃないか!
あーまた未見なのに何言ってるんだか…

_ めかぶ ― 2007年04月10日 09時17分21秒

えへへ、またもや未見のたかこさんを刺激してしまいましたでしょうか?
どうも近年、この手の女の内面に手を突っ込まれたような映画に感じ入ってしまうのよねー。感想は観る度に、人の意見を聞く度にまたちょっとずつ変わったりもしてますー。
たかこさんのコメント、かなり、どきっとしますわっ♪

_ とらねこ ― 2007年08月09日 18時58分34秒

こんばんは、めかぶさん♪
めかぶさんはこれを、また見てしまったのですね!
めかぶさんのこの映画に対するハマリように刺激されて、ついついコメントTBしてしまいましたが、
もしかしてめかぶさんは、こうしてコメントTBするのがお嫌いな方なのでしょうか?
もしそうであれば、すみません!
今後気をつけますので、どうぞ本心をおしえてくださいまし★

女はリアリストではなくて、リアリストたろうとしている、というめかぶさんのお言葉、ズキズキしてしまいましたね。
本当にそうだと思います。
私も実は、このラスト、見た当時は、「どうしてこの男と一緒に逃げないのだろう?そこが分からない」、と思いました。
しかし、今考えると、一緒に逃げようと言うのは、私の願望であって、もし私が本当にこの女性の立場ならどうだろう?
と、後で考えました。やっぱり、私も、家庭に戻っていくと思いました。
ロマンスを求めるからこそ、ロマンスには、ロマンスの位置を保っていてほしいんですね。
それが分かってしまって、自分も大人になったなあ、と思いました。
初めてこちらにはコメントを書いたのに、随分長くなってしまい、すみませんでした。

_ めかぶ ― 2007年08月09日 21時43分03秒

きゃあ、何をおっしゃるとらねこさん♪
コメント、TB大歓迎ですよ!
ただでさえ細々と続けているので淋しいもんです。
どんどん残してってください。

半年近く前に観た時よりも冷静に、自分の願望を抑えて映画の中の男と女を観ることができました。以前は観ていてざわざわしてたけど今回は落ち着いて観られたし。逆に元気になっちゃった♪
我ながら変だよ~。(笑)

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_ レザボアCATs - 2007年08月09日 18時52分45秒

“デュアル・フレーム”なんていう、二つの映像が同時に映し出される・・・こうした仕掛けが全編通じて見られる、なんていうのは、初めてだった気がするんだけど。これは成功しているのかなあ?どうなんだろう。・・・

_ とんとん亭 - 2007年09月02日 06時43分25秒

「カンバセーションズ」 2007年 米/英

★★★★

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原題:Conversations with Other Women
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