ロック、ストック&フォー・ストールン・フーヴス2007年03月05日 21時18分31秒

ロック、ストック&フォー・ストールン・フーヴス(2000)
ロック、ストック&フォー・ストールン・フーヴス LOCK STOCK & FOUR STOLEN FOOVES
2000 英 監督:シェリー・フォークソン
デル・シノット スコット・マスレン ラルフ・ブラウン ニコライ・コスター・ワルドウ

あるマフィアのボスが手にする筈だったある時計とポルノビデオを手にしてしまったシノットたち。彼らのボスと外国人の売人もからんだドタバタ英国コメディ。

「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」のガイ・リッチー監督が製作のTV版続編。全部で4編あるのかな。レンタルの棚にあるのはずっと知ってたが観てみる気になったのは勿論、出演者にニコライ・コスター・ワルドウの名前があったからに他ならない。

テイストは「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」と同じでかなり楽しい。確かに以前ほどのインパクトはないけれどそれでも十分に楽しめた。ドタバタなのにスタイリッシュなのはどうして?
外国人の売人コンビのひとりがワルドウ。教えてもらうまで全然知らなかった!いやー、いいキャラクター。いろいろ揃った中でもこの売人たちのおっかしなこと!コメディテイストのワルドウを観るならこれがお薦め。
ただでさえ脱ぎっぷりのいいワルドウだが今回が最高かな。なんたって身ぐるみ剥がされてストリーキング状態ですから。

マグダレンの祈り2007年03月05日 21時39分09秒

マグダレンの祈り(2002)
マグダレンの祈り THE MAGDALENE SISTERS
2002 英・アイルランド 監督:ピーター・ミュラン
ノーラ・ジーン・ヌーン アンヌ・マリー・ダフ ドロシー・ダフィ ジェラルディン・マクイーワン アイリーン・ウォルシュ ピーター・ミュラン

従兄弟にレイプされたアンヌ、施設で男の子に色目を使うノーラ、赤ん坊を産んでしまったドロシー。彼女たちを戒めるために送られたマグダレン修道院は女性としての尊厳を奪われた忌まわしいところだった。

2006年で一番最初に衝撃を受けたのがこれだった。信仰心というものに縁がない私は、宗教が根本にあるこの女性に対する究極の考え方がまったく想像できない世界なのでただただ唖然。まったく理解の範疇を超えている。登場人物の誰をとっても哀しいやら腹が立つやら始終心がざわざわする映画。
一番ぐっとなったのは、最後にこの手の修道院が96年まで存在したという一文を見た時。ほんとに私にはとても理解できない!

監督が俳優のミュラン。こんな作品を撮るなんて思いも寄らなかった。地味ーーーな俳優なのに底知れない力のある人なんだなぁ。知らなかった。

この年、最初からこんな作品に出会ってしまい今年も重い作品に精神的につぶされてしまうのかと思った。でも結果としてそれ以上に楽しくなれた作品が現れてくれて正直ほっとした。

タッチ・オブ・スパイス2007年03月05日 22時33分54秒

タッチ・オブ・スパイス(2003)
タッチ・オブ・スパイス A TOUCH OF SPICE
2003 ギリシャ 監督:タソス・ブルメティス
ジョージ・コラフェイス タソス・バンディス バサク・コクルカヤ

大学教授のコラフェイスは何十年ぶりかに祖父が訪ねてくると聞いて得意の料理でもてなす準備をする。彼の料理好きはスパイスを扱っていた祖父の影響だった。彼は少年時代の祖父の店に思いを馳せる。

天文学と料理とスパイス、そして恋。ひとつひとつのプロットがロマンチックな繋がりを見せるギリシャ映画。
民族戦争の暗い背景がありながら祖父との思い出と大人の恋。重い題材を取り扱いつつ少年期の想い出と現在に繋がる恋物語がロマンチックなのだ。

少年期の場面。祖父のスパイスの店の上階。スパイスで描く銀河系が非常に美しい。窓から射し込む柔らかい光が店のあちこちのスパイスの束や壜に当って輝いている。あの店内はどんな香りがするのだろう?
祖父の生き方もおぼろげながら染み入るし、主人公の祖父への愛情も感じるし、いろんな感情がスパイスを混ぜ合わせてほどよい香しさを漂わせるように交じり合う。とても奥行きのある心の温かくなる作品だった。

トランスアメリカ2007年03月05日 23時21分47秒

トランスアメリカ(2005)
トランスアメリカ TRANSAMERICA
2005 米 監督:ダンカン・タッカー
フェリシティ・ハフマン ケヴィン・セガーズ エリザベス・ペーニャ フィオヌラ・フラナガン バート・ヤング グレアム・グリーン

性転換手術を決意した性同一性障害のハフマンは突然自分に息子がいたこと知らされる。拘留された警察から出してやり彼を今の親元へ送り届けるために一緒に大陸横断の旅に出る。

彼女をよもや父親とは知らない息子とのなんとも複雑な感情を秘めたままの旅はおかしくもあり温かくもあるコメディ感覚のドラマ。
ネイティブ・アメリカンのグリーンやハフマンの家族たちなど旅をする先々で出逢う彼らを取巻く人たちもまた温かい。ロードムービーならではの味わいだ。

ハフマンの演技は各賞で話題になったが特殊な役柄だからというのではなく複雑な心情がストレートに観ている者に伝わる演技だからだったのではないかと。彼女の泣き顔は女としてみっともないことこの上なかったのだが、だからこその時の彼女のどうしようもないせつなさが伝わるシーンだった。
息子役のセガーズがルックスも演技もなかなかの好印象。生意気だけどどこか寂しげでハフマンとしても放っておけなくなってしまうのは彼に母(?)性本能をくすぐられたか。

次第にセガーズがハフマンに好意を持ってしまうからまた大変なことになるのだが。コメディとはいえトランセクシュアル(性転換手術)というのは本人は勿論だが家族にとっても大変な問題。頭と心で受け止められるかは本人たちの間の関係次第。どれだけお互いの胸のうちを知り、信頼し、理解してあげられるか・・・。

あの救いを感じさせる終わり方がとても心地よい。いい映画を観たなと思う1本だ。

ナイロビの蜂2007年03月06日 07時54分06秒

ナイロビの蜂(2005)
ナイロビの蜂 CONSTANT GARDENER
2005 英 監督:フェルナンド・メイレレス
レイフ・ファインズ レイチェル・ワイズ ダニー・ヒューストン ビル・ナイ ピート・ポスルスウェート

外交官のファインズと運動家のワイズは出会って幾らもたたずに恋に落ち結婚。ファインズの任地であるナイロビに暮らしていたが社会運動を続ける彼女はある日出かけた先で無残な遺体となって発見される。ファインズは事件の真相を追う決意をする。

"THE CONSTANT GARDENER"は直訳すると"誠実な庭師"。製薬会社による人体実験という社会問題的には大きなテーマを扱っているがこれは十分にラブストーリーだ。内気な情熱家のレイフ爆発。荒れまくったレイチェルの家の庭を激情に駆られて掃除し始めた時のgardenerのレイフに胸が詰まって大変だった。そこから真相の究明に立ち上がる決意をしたわけだ。
"生まれついての革命家"の彼女とそういう彼女に惹かれた"誠実な庭師"のレイフ。そのままの彼女を愛しているから踏み込まない。そういう彼を愛しているから巻き込まない。結果、お互いに苦しみを抱えてる部分もあったりして見ていて歯がゆくていらいらする。しかし、だからそういう形もありなんではないかと思った。だからこそレイフの決意後の行動に説得力があると。
単純にラブストーリーを観たとまでは言いわないが、でもやっぱりとても愛を感じる映画だ。レイチェルの最高に美しい姿が目に焼きついているのはレイフ演じる夫の目で見た愛する妻の姿だからなのだ。

大自然の風景(不毛で絶望的にも見えますが)の中に貧困や大きな力に食い物にされる弱い国民たちの姿。この映画といい「ホテル・ルワンダ」といい、アフリカの貧しい国々に大きな絶望を感じてしまう。原色っぽい太陽や埃を感じる映像が「シティ・オブ・ゴッド」の監督作だった。納得。メイレレス監督の映像は社会問題部分がリアルに浮き彫りなのにこれだけラブストーリーと一体化してるのはすごいと思う。