マーク・ウォールバーグ2007年06月18日 14時51分04秒

ディパーテッド(2006)
MARK WAHLBERG   1971/6/5  USA

マークも映画を観始めた頃からかなり見慣れてきた俳優だ。最初の頃からかなりのやんちゃ坊主のイメージが強く、演技力・存在感ともに成長の見られる最近でもその片鱗は隠せない。

彼のことは最初に観たのが「ブギーナイツ」なので忘れようにも忘れられんのだが・・・。ポール・トーマス・アンダーソン監督作で、彼の役は70年代ポルノ業界のAV男優。話題性満載のうえに評判も良いこの作品で主演を果たした彼の快進撃がここから始まったのはある意味納得。

今更だが人気グループ、ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックに兄のドニーについで参加。自身もラップバンドをやったり、カルヴァン・クラインの下着モデルをやったり経歴は華やか。
映画デビューは道徳ドラマのような「勇気あるもの」。ダニー・デヴィートが教師を務めるおちこぼれクラスの兵士の一人。
その次がレオナルド・ディカプリオの青春映画「バスケットボール・ダイアリーズ」だから作品にはかなり恵まれている。

彼の発展のきっかけになったもうひとつにはジョージ・クルーニーとの出会いもあるかも。「スリー・キングス」で意気投合。次の「パーフェクト・ストーム」でも共演。実は「オーシャンズ11」のマット・デーモンも最初はマークだったと言う話。
その「オーシャンズ11」に参加しないで何を選んだかというと「PLANET OF THE APES/猿の惑星」。これがいいのか悪いのかなんともいえない。人間の役なのに、猿顔のメークなしでいけるんじゃないかとか笑い話のネタにされながらも、しかしながら話題のティム・バートン作品である。悪い話じゃないだろう。

猿顔とか言っちゃってるが、まあ、マークはハンサムとは言い難い。先にやんちゃ坊主系だと書いたが、その実、下層階級の貧しい9人家族で育ち、ボストンでの少年時代はストリートの不良少年だったとか、服役経験もあるそうで。
笑うと結構可愛いんだけど、どこか斜に構えていて、眉間に皺寄せて人を威嚇したような眼差しが様になっているのはそのせい?ややもマッチョ気味に鍛えられた身体だしぶちキレたら怖いのかもねえ。
そういう育ちや経験が生み出した彼の面構えはルックスを超えた魅力。そこが彼の俳優としての強みであり売りなのだ。
だもんで悪役がなかなかいけると思うんだが意外にも初期の「悪魔の恋人」でしか見たことがない。でもなんかどこか怪しかったり、過去に後ろ暗さを感じる役が確かによく似合う。ドラマでもアクションでもサスペンスでも警察官、犯罪者、といった役が多いのも彼の特徴。「フェイクディール」「NYPD15分署」「裏切り者」「フォー・ブラザーズ」など。やはりそんな暗いイメージがあるんだろうかねえ。
しかし一貫してるのはどれも最後には正義や仁義、人情に従って生きる男であること。彼にはそんな雰囲気を漂わせるものがあるのかもしれない。

「ディパーテッド」なんかはその最たるもの。実際に観ていてレオよりマットより、私はマークの演技に一番惹かれた。オスカーノミネートはびっくりしたが、彼もこんなところに呼ばれる俳優になったのか~と、ちょっと嬉しかった。

暗い役ばかり挙げ連ねたが楽しいものも結構ある。不運な殺し屋役の「ビッグ・ヒット」。ロック青年のほろ苦いサクセスストーリーの「ロック・スター」。リメイクのわくわくクライム映画「ミニミニ大作戦」。
殺し屋のクセに元はといえばたかが女一人のためにあたふたしまくってる「ビッグ・ヒット」なんて大好きなんだけどなー。力が抜けてる時のマークの表情は優しい。結構“ふにゅ”っとした系だと思う。
コメディやスタイリッシュな作品では、この顔と大真面目に怖いくらいの顔とを使い分けるから効果絶大。このメリハリの良さがぴりっとしていて良いのだ。

順調にキャリアを積んで評判を得てきたからか作品には本当に恵まれていると思う。俳優仲間や監督などとの関係も良好なのだろう。ここ最近の「ハッカビーズ」から「ディパーテッド」「フォー・ブラザーズ」「ザ・シューター極大射程」というラインナップを見てもわかるとおり、有名監督作から評判の新人監督の話題作、コメディからアクションまで主演・傍役も選り取り見取り。
男臭くてどこか危険な匂いのするマークに集まる脚本は後を絶たないだろう。演技力にも磨きがかかってきた30代も半ばの今、じっくり吟味していいキャリアを積んでいってもらいたい。

(ちなみに彼の出演作で名作のリメイクが1本あるのだが、役柄も悪くないんだけど作品的に大駄作で絶対にお薦めできないのでここではあえて挙げません。汚点以外の何者でもないと思う。気になる方は探してください。責任は持てませんー。)