リチャード・ロクスボロー2006年02月27日 21時41分28秒

ヴァン・ヘルシング(2004)
RICHARD ROXBURGH  1962/1/1 オーストラリア

この人の名前の読み方にはいくつか出ているが、検索にかけるには“ロクスバーグ”が一番ヒット数が多いだろう。発音的にはこちらが近いと思うのだが日本語表記がこれで正しいのか定かではない。ここ最近よく見かけるオーストラリア人俳優だ。

最初に見たのは多分「MI:2」の悪役の№2。普通の人すぎてあまり記憶に無かったがかなり気の毒な死に方をしたように思う。で、何で憶えてるかと言うと「ムーラン・ルージュ」の公爵。「ヴァン・ヘルシング」のドラキュラ伯爵ならわかってもらえるだろうか?「オスカーとルシンダ」「リーグ・オブ・レジェンド」などもそうだがコスチュームものでの印象が強く普通の現代人だった「MI:2」とまったく一致しなかったのはこのためだと思う。
目元がクールで細い顔立ち、ブロンドで青い瞳がこのコスチュームものの衣装やメイクの似合うこと。ただ全体的には地味なのでかっこいい!っていうタイプではない。普通の善人キャラではインパクトに欠けるのは否めない。そこがまさにハリウッドで悪役に抜擢されるゆえんだろう。

「ヴァン・ヘルシング」では一貫してクールで細面の顔にひとすじの黒髪をたらして時にセクシーにも見える新しいドラキュラ伯爵のイメージを作っていたが、クールに見えるくせに悪役ながらどこかとぼけたようにも見えるのがこの人の魅力だと思っている私。「ムーラン・ルージュ」が一番好きかもしれない。ニコル・キッドマンとユアン・マクレガーをいたぶるあの冷たい目は憎々しいほどだが、おまぬけな一面を見せるコメディパートとのギャップが激しいので作品における彼のキャラの効果が抜群に活きていると思う。

この人は絶対にコメディのセンスがあると思っていたら、ここにきて普通の現代人役で彼を見ることができたがやっぱり!
「ラブ・アクシデント」なるまぬけな邦題のラブストーリー。原題が“THE ONE & ONLY”という英国作品。恋する妻子持ちのシステムキッチン屋さん(?)を演じるロクスボローが最高におかしい。ストーリー自体がシニカルな笑いに溢れているのだが彼がまさにはまっている。彼のポーカーフェイスがさらにおかしさを増している。
新作の「ステルス」でも役自体は富豪の天才プログラマーと一見かっこいいのに、トラブルによって現場に引っ張り出された彼はあっという間にコメディパートを引受けたようなキャラに変身。どこも笑う部分のない作品の中において光ってるぞ!ロクスボロー。

オーストラリア時代の作品をほとんど知らないのだがコメディテイストに溢れる作品がもっとあるに違いないが、勿論それだけじゃないだろう。
映画以外にもTVに舞台に活躍の幅が広くデヴィッド・ウェナムとは馴染みのようだ。(ヒュー・ジャックマンもいた「ヴァン・ヘルシング」の撮影はさぞかし楽しかったに違いない。)

オーストラリア映画「革命の子供たち」で出生の秘密に翻弄される複雑な人物を演じたロクスボロー。ちらっとみせるおかしさは健在なものの非常にシビアなキャラクターが非常に魅力的だった。政治色の強いドラマだが微妙におかしくて面白い作品だった。サム・ニール、ジュディ・デイヴィス、ジェフリー・ラッシュ、レイチェル・グリフィスと大物オーストラリア俳優が顔を並べる中においても彼の存在感は小さくない。ハリウッドでの活躍は役にも恵まれて順調だが、くーっ、もっとこの時代の作品が観たいぞ!

初出:2005/10/30(日) 午後 1:49


既出コメント:

ヴァン・ヘルシングのモンスター3人組によるコメンタリーで自己紹介していたのを聞くと、“ロックスブラ”って聞こえるんですよ。アクセントはロです!気取った2枚目な見た目と、ウェナム顔負けのコメディテイスト溢れるキャラのギャップが、とても楽しいですよね(笑)歌って踊れて楽器もできるんですから、もっと色んな役を演じても良さそうなものですが・・・
2005/10/30(日) 午後 2:45 [ aikirin ]

りんさん、コメントさーんきゅ!ウェナムに次ぐギャップの楽しいオーストラリア人俳優ですよね。そう、見た目がクールだから余計におかしいんだ。もっと「ラブ・アクシデント」系の作品を期待します。多才なお方なのね。拍手!
2005/11/15(火) 午後 8:18 [ mekabucchi ]

リーアム・ニーソン2005年12月30日 11時20分57秒

ラブ・アクチュアリー(2003)
LIAM NEESON  1952/6/7 北アイルランド

映画を観始めた初期の頃からよく目にしていた人の一人。私の中で英国人俳優の代表のような人。しかも堅くて重い実話に基づく史劇や社会派ドラマなど重厚なものが多く、このタイプの企画があると必ずオファーが彼の元へ行っていたかのよう。現在で説教くさい俳優の代表格かもね。

早いうちからハリウッドへも進出。「ダークマン」や「プランケット城への招待状」意外にも「ダーティ・ハリー5」のような娯楽作品に出演している。もっとびっくりなのは「夫たち妻たち」でウッディ・アレン作品にも登場。

お堅い作品、娯楽作品、ハリウッド、英国作品。主演、助演のどれもバランスよく彼は製作者側からの人気もあり比較的作品には恵まれているようだ。確かに程よい重厚さと品の良さがあり、でしゃばらず落ち着いた雰囲気のある彼は求められやすいのかもしれない。

ここ最近は主人公の父親とか師匠なんて役どころが多く「ギャング・オブ・ニューヨーク」ではレオナルド・ディカプリオ、「キングダム・オブ・ヘブン」ではオーランド・ブルームが彼の息子。「スター・ウォーズエピソード1」ではユアン・マクレガーの師匠。ハリウッド大作にひっぱりだこだけど必ず途中でいなくなる。とりあえず印象には残るけどちょっともったいない使われ方のような気もする。飽きないのだろうか?そろそろその手の役は断ればいいのに次の「バットマン・ビギンズ」も似たような・・・。
とはいえ「キングダム・オブ・ヘブン」の彼はなかなか好きだ。年齢とともに穏やかな表情になってきた感がある。本人も激しかったりキツいイメージのキャラクターよりも温かみのある人間の役を選んでいるように思うがどうだろう?
ことに「ラブ・アクチュアリー」のアンサンブルキャストのひとり、妻に死なれて息子とふたりになってしまう彼はとても優しくて人間くさくていい感じだ。継父としてとまどいながらも息子と心を通わせていく姿が微笑ましい。彼の笑顔がたくさん見られたのはとても久しぶりだったかも。

初見の頃から途切れることのない活躍ぶりが嬉しい。堅い役も優しい役もハリウッド大作も英国作品も。きっとこのまま今のスタンスで続けていってくれるのだと思うし、そう願う。

初出:2005/5/29(日) 午後 11:55


既出コメント:

堅実だけどどこか垢抜けないキャラ:これが哀生龍がリーアムに持つイメージです(苦笑) だから、ラブ・アクチュアリーでの少し情けないパパの表情は、ホッと出来ちゃうなぁ~
2005/5/31(火) 午前 6:11 [ aikirin ]

>堅実だけどどこか垢抜けない。って、そうかもー。スマートさは確かにない。ちょっと困った顔に見えるあの笑顔が私は好きです。そうそう。今、来日してるのねー。渡辺謙さんの隣で今日も困ったように微笑んでいらっしゃったわ。プロモーションとかあまり得意じゃなさそう。
2005/5/31(火) 午後 10:58 [ mekabucchi ]

「砂と霧の家」とロン・エルダード2005年11月16日 07時40分35秒

砂と霧の家(2003)
(中央)RON ELDARD 1965/2/20 USA

砂と霧の家 HOUSE OF SAND AND FOG 
2003 米 監督:ヴァディム・パールマン
ベン・キングスレー ジェニファー・コネリー ショーレ・アグダシュルー ロン・エルダード フランセス・フィッシャー キム・ディケンズ

父の遺産である家を数100ドルの税金未納のために差し押さえられてしまったコネリーと競売でその家を手に入れたイラン人移民のキングスレー。差し押さえは郡の間違いだったと判り、家を取り戻そうとするコネリーと手放すまいとするキングスレーとの間に争いが起こる。

強烈な悲劇で後味は良くない。ここまでしなければこうはならなかったろう的な事が雪だるま式に重なりすぎて大きな悲劇になってしまう。“家族と家”を描いたストーリーで登場人物のそれぞれに家族があり悩みや問題を抱えている。
一番のばか者はコネリーを愛してしまったエルダードだと誰もが思うだろう。“あんたがあんなことさえしなければ・・・”だが彼も彼なりに、すべては愛する彼女のために良かれと思って行動しただけなのだ。結果は最悪だけれども、それはとても誠実で素直な行動であって彼の気持ちは理解できる。
この作品の登場人物それぞれ。誰が悪いのかなんて一概には言えないと思った。

ロン・エルダードは“ディザスター・ムービーの出演者”でも少しふれたが、こういう地味な作品で人間くさい印象に残る演技を見せる力がある俳優だと思う。
最初に見たのは「スリーパーズ」で冒頭少年時代の悪夢を払拭させるべくケヴィン・ベーコンを撃ち殺す。目立ちこそしなかったが、この作品で成長した4人の少年の一人にキャスティングされたのは彼にとって意味があったと思う。次が前述の「ディープ・インパクト」。「ブラックホーク・ダウン」の墜落したヘリのパイロットと「プライベート・ソルジャー」の憎まれ役の小隊長で戦争映画のアンサンブルキャストでも印象に残る個性が見えた。
暗い作品が多いが「ミステリー、アラスカ」の軽~い奴の彼も悪くない。ルックスも悪くないし、オールアメリカンボーイっぽい雰囲気もある。もう少しこのての作品があってもいい気がするが、本人はシリアスなドラマがお好みか?こんな重厚な「砂と霧の家」で最初に姿を見たときは正直驚いたのだが、彼はあの作品の中でのポイントともいえるあの役割を確実に果たしていると、私は思う。エルダードは演技者として期待できる俳優だと思っている。
が、いまひとつインパクトに欠けるんだろうなぁ。「フォーン・ブース」でキーファー・サザーランドにあの役を交代させられてしまったのは気の毒だが、確かにあのキーファーの声には迫力があった。
次は頑張れ、エルダード!

初出:2005/5/19(木) 午前 1:22


既出コメント:

めかぶさん、こんにちは。2度目のコメントです。またロンについて触れてくださって有難うございます。多分、一発大きな役を得た日には、彼はかなりの注目を浴びるはずなんですが(実際TVシリーズ「Blind Justice」で大きな注目を集めたはず)、本人が作品選びにこだわりみたいなものを持ちすぎているような気もするので、そこらも考慮したり、それよりも映画製作者が彼にもっと注目してくれたら、私たちの夢はかなうと思います
2005/5/22(日) 午後 6:42 [ heartsarang ]

はーとさん、いらっしゃいませ。見ていてくださって嬉しいです。ありがとうございます。エルダードのこだわりと製作者側のタイミングがうまく噛み合ってくれるといいのですがね。でも残してる作品は決して悪くないので製作者の目に留まってくれればきっとブレイクする役が来るはず。ブレイクまで行かなくても重要な役にキャスティングされるだけの力はあるもの。楽しみに待ちましょ!
2005/5/23(月) 午前 1:19 [ mekabucchi ]

ローラ・リネイ2005年09月12日 21時49分56秒

ラブ・アクチュアリー(2003)
LAURA LINNEY   1964/2/5 USA

「ミスティック・リバー」で見事だったのは俳優だけではない。デイヴの妻役のマーシャ・ゲイ・ハーデンとジミーの妻役のローラ・リネイが素晴らしかった。この二人はとても対照的で、夫に疑惑を持ってしまったハーデンの弱さと何があっても夫を支持して守ると決めたリネイの強さの対比が哀しかった。パレードで泣きながらさまようハーデンと夫の隣で微笑むリネイのこの差が強烈だ。

リネイはイーストウッド監督とは「目撃」で彼の娘役を演じており、お墨付きだったのだと思う。彼女の演技の質の高さはどの作品を観ても明らかで様々な監督の中でも知れているのではないだろうか。ジム・キャリーのフェイクの妻役だった「トゥルーマン・ショー」のピーター・ウィアー、ケヴィン・スペイシーの同僚を演じた「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」のアラン・パーカーなど、名優名監督の作品での起用が目立つ。

キャリアのスタートは90年代の初頭。TVも含めて小さな役から始まるが次第に重厚な作品がどんどん増え存在感が大きくなる。とびっきりの美人じゃないが時折見せるこぼれるような笑顔は子供みたいにキラキラして可愛い。「ラブ・アクチュアリー」の奥手の彼女がそうだった。しかしながらやっぱりただのかわいい女だけじゃないのが彼女の役どころ。これや「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」の彼女は家族の重荷を抱えて自分を犠牲にしている女性だった。しかしそれを重荷とせずに愛情と優しさに変えようとする、切なさに溢れていて彼女の幸せを願わずにはいられない気分になった。

こんな女性らしさも「ミスティック・リバー」「ライフ・オブ・・・」で見せる底知れぬ強さもリアルに表現してみせる彼女の実力は近年のオスカー候補の常連になりつつあることでもわかる。彼女が獲るのも時間の問題だろう。
初出:2005/4/28(木) 午後 8:26

追加:
「愛についてのキンゼイ・レポート」でまたかわいくもあり大人の女を感じさせるリネイを堪能した。相手役との相性ってあると思うがリーアム・ニーソンと彼女は完璧!
教授と学生の出会いから長い時を一緒に生きてきた夫婦になるまで・・・いいなぁ♪

既出コメント:

ローラはラブ・アクしか見ていないのですが、ロドリゴとの切ない関係が良かったです。 切ない表情が素敵でした!
2005/4/29(金) 午前 11:14 [ aikirin ]

非常にまれですが女優に注目することもあるのです。ここではまだレニーとモーラ、で、彼女ですが、ローラはほんとに凄い女優だと思っています。強烈に印象を残してくれる作品がいっぱい。哀生龍さんには「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」は観てもらいたいなー!
2005/4/29(金) 午後 1:46 [ mekabucchi ]

ルパート・グレーヴス2005年09月02日 21時22分11秒

禁断のエバ(1999)
RUPERT GRAVES  1963/6/30 UK

彼に目が釘付けになったのは「禁断のエバ」だった。タイトルだけで想像すると妖しい映画かと思ってしまうがまったくそんなことはない。タイトルロールを演じるサマンサ・モートン主演の切ないラブストーリーの英国映画だった。グレーヴスは彼女と惹かれ合う非常に繊細な雰囲気の青年。モートンには夫がいて、この夫が二人の間に流れる空気を察して激しく嫉妬する。挙句、自分を傷つけることで彼女を繋ぎ止めようとするするためモートンの辛さは並々ならぬものになるわけだが、相手のグレーヴスはつとめて冷静で無理にモートンを求めようと行動には出ない。出ないからこそ押さえようとしている気持ちが溢れそうなのが表情にありありと浮かんでいて、ふたりが一緒のシーンは観ていてもの凄く切なかった。この繊細さが少しライナス・ローチと同じようなタイプなのかなと思ったのも惹かれた理由だ。

ところが、この作品でこんな抑えた演技が印象的だったのに他の作品を観てみたら結構エキセントリックな役だったのには驚いた。といってもそんなに数を観ているわけではないのだが、「ハンドフル・オブ・ダスト」「ダロウェイ夫人」。とりわけ戦争により精神を病んでしまった男を演じた「ダロウェイ夫人」は鬼気迫る狂気の演技で痛々しかった。繊細さと紙一重の神経質さを併せ持っていて演じ分けることの出来る人なんだと思う。このギャップはかなり大きいので立て続けに観たりすると驚かれると同時に面白いと思う。
また、最近変わったところで「EX エックス」というアクション系の作品に出ていた。が、彼はアクションは一切していない。エックススポーツシーンを映像にしてCMなどを製作している会社のオーナーかなんかの役で、身体を張るスタッフを尻目に顧客に媚を売って契約を取り付けるような一見いけ好かない奴だったのだが、これが妙に似合っていておかしかった。コメディーパート的な役にもなっていて、こんなタイプもありなんだー。

基本的には「禁断のエバ」のグレーヴスに魅力を感じているので、また切ない彼を観たいのだけどねぇ。本人はどのタイプを気に入って演じているのだろうか?
初出:


既出コメント:

ここ一、二年で「天使も許さぬ恋ゆえに」「英国万歳!」「ダロウェイ夫人」と観る前はずっと「眺めのいい部屋」のおとうとクン、という認識でした。「英国万歳!」の純真な近衛兵が結構好きだったりします。 めかぶさんが度々「禁断のエバ」の話をされるのですごく観たいです。(V・レッドグレーヴの実子ではないと思うのですが・・・もしかして隠し子ですか??)
2005/4/19(火) 午後 10:17 [ kristin65226 ]

クリスティンさん、ご指摘ありがとうございます。どっかで見たか聞いたのをずっと信じて鵜呑みにしてましたが・・・お恥ずかしい!訂正しますー。また何かあったらどんどん言ってください!ブログって訂正が可能なのでありがたいわ。(大汗!)「禁断のエバ」はグレーヴスもだけどモートンが好きです。これの彼女が一番好きかな。「ギター弾きの恋」に近いです、多分。
2005/4/20(水) 午前 0:36 [ mekabucchi ]