リトル・ミス・サンシャイン2007年03月27日 08時03分55秒

リトル・ミス・サンシャイン(2006)
リトル・ミス・サンシャイン LITTLE MISS SUNSHINE
2006 米 監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス
グレッグ・キニア トニ・コレット アビゲイル・ブレスリン アラン・アーキン ポール・ダノ スティーヴ・カレル メアリー・リン・ラスカイブ

負け組否定者のパパ(キニア)、自分の意思で口をきかないお兄ちゃん(ダノ)、破天荒なじいちゃん(アーキン)、こんな家族をまとめるのに必死で少々お疲れ気味のママ(コレット)に、自殺未遂したゲイの叔父さん(カレル)が加わったおかしな家族の小さな妹(ブレスリン)が美少女コンテストに出場決定!一家を乗せておんぼろバスはカリフォルニアを目指す!

なんてあったかい映画なんだろう。小品ながら、クチコミで広まって公開館が増えていったというその理由が分る気がする。
キャラクターのひとりひとり、シーンのひとつひとつはどこから見てもコメディだ。思わず噴出してしまうようなプロットが満載。だけどどこからも感じられるあったかさと柔らかさは一体何なのだろう?

家族の誰もがみんな何かが欠けている。だけど旅の中でそれぞれ、ひとつまたひとつ、その何かを取り戻していき、いつしかバラバラだった家族は絆を取り戻していく。
ずっと夢見てきたものが思いもよらぬ事実で吹き飛んでしまったお兄ちゃんの横に座って、黙って肩に手を置いた妹。
人生は成功者でなければみじめなだけだと思っているパパは、自ら挫折して負け組になるのかと落ち込みそうになるところを、失恋して生きる気力を失くしてしまった叔父さんを、立ち直らせてくれるきっかけになったのは、目標に向って純粋に心躍らせている小さな妹の姿。

そして言ってることがめちゃめちゃなエロじいちゃんも、彼の存在が家族たる結束力を繋ぐ大きな力になるのだ。
本当は自分の容姿に自信がないブレスリンに「おまえは世界一可愛い女の子だ」と言うじいちゃん。家族ならみんなそう言うだろう言葉だが、本当に心から安心できるかどうかは家族の絆の強さ次第。バラバラな家族の中でブレスリンとじいちゃんの間にだけあったものが、この旅の中でみんなに広まっていったのだ。

お世辞にも可愛いとはいえないこの子がミスコンというところが、また笑えるのだけど、容姿の問題じゃなく、ホントにこの子の存在が可愛い!
この映画の色を決定付けているのは確かにこの子なのだ。この子の純粋さは、ミスコンに出場する気色悪いほど化粧を塗りたくった他の子供たちとの違いではっきり分る。
じいちゃんから教えてもらったびっくりなダンス。これを見て家族はみんなここで何をすべきかを悟る。
好き嫌いが分かれるかもしれない微妙な展開ではあるが、言いたいことは良く判る。

見た目は良くなくてもその人の良さはそんなものじゃ測れない。どんなに挫けても家族は励まし助けてくれるもの。当たり前のことだけどそれを噛み砕いて楽しく教えてくれるようなそんな映画だ。

アカデミー賞で、アラン・アーキンの助演男優賞と脚本賞のおまけがついた。どうせなら勢いで作品賞も獲って欲しかったけど、まあいいでしょう。
ちなみにインディペンデント・スピリット・アウォードでは作品賞を獲得。やっぱりピカッと光る優れた小品というところなのかな~。