クラッシュ2007年03月07日 17時09分56秒

クラッシュ(2005)
クラッシュ CRASH
2005 米 監督:ポール・ハギス
マット・ディロン ライアン・フィリップ テレンス・ハワード タンディ・ニュートン サンドラ・ブロック ブレンダン・フレイザー ドン・チードル ジェニファー・エスポジット ラレンツ・テイト クリス・ブリッジス ウィリアム・フィックナー ノナ・ゲイ ロレッタ・デヴァイン

LAの一角で車の衝突事故が起こる。その現場の近くで黒人青年の遺体が発見された。その青年は数日前にある夫婦の車を襲っていた。

アンサンブルキャストの登場人物たちが微妙に絡み合い、人種偏見、差別の現状を浮かび上がらせるストーリーが展開される。それぞれの人物の心情深くまでは切り込まずにあっさりと流しているような演出が逆に興味深い。
アンサンブルキャスト(グランドホテル形式)大好きな私ですが本当は一人一人のストーリーにしっかり突っ込んだ作りの方が好きなので全体的にはそれほど気に入ってはいないのだけど、ひとつひとつのエピソードによっては妙に惹かれるものもある。
何となく気になって2回観に行ってしまって、後になってからこれに関してはこのさらっと流した作りで良かったのかなと。結局2回劇場に行ってしまったということは気に入ったということだろうな。
アカデミー賞で作品賞を獲ったのにはびっくりだったけどその価値はあると思う。ちょっと嬉しいおまけです。

キャストについてはテレンス・ハワード、マット・ディロン、ライアン・フィリップの演技が特に印象深い。
ハワードは近年めきめき注目されるようになったけどもともと印象深い演技をする俳優だ。「ジャスティス」が初見だったけど巧い!注目される作品に出会えてよかった。最近は彼がとても美しい人だなと感じる。
ディロンはフラット・パック時代の代表格だった彼の近年の復活は私にはとても嬉しい。B級作品でコツコツ地道な活動は続けていたから、よかったねー!と言ってあげたいくらい。いい俳優だよね。
フィリップは作品の当りはずれが激しい。彼の美しいルックスは配役するのに確かに難しい気がする。たまに突然いい作品にひょっこりキャスティングされると素晴らしい効果があったりするから侮れないと思うんだけど。これの前は「ゴスフォード・パーク」。なぜここに彼が?と思ったけど観て納得。でも今回の方がキャラクター的にも演技的にも抜群だと思う。

マッチポイント2007年03月07日 17時59分10秒

マッチポイント(2005)
マッチポイント MATCH POINT
2005 英 監督:ウディ・アレン
ジョナサン・リース・マイヤーズ スカーレット・ヨハンソン エミリー・モーティマー マシュー・グード ブライアン・コックス ペネロピー・ウィルトン ジェームズ・ネズビット ユエン・ブレムナー ルパート・ペンリー・ジョーンズ

二流の元プロテニスプレイヤーのマイヤーズはコーチしていた上流家庭の息子グードに気に入られた縁で妹のモーティマーと結婚するまでになる。思いがけなく手に入れた上流社会の暮らしだったがグードの婚約者のヨハンソンに魅せられ関係を持ってしまう。しかし彼女が妊娠してしまいマイヤーズは苦境に立たされる。

ウディ・アレン作品は正直好きではありませんでした。特に彼が出演しているのがっ!彼が演じる男が癪に触ることこのうえない。いらいらしてくる。
今回は勿論出ていませんし、しかもニューヨークを離れてロンドンが舞台というのでどんなだ?とは思っていましたが・・・。
はっきり言って好きです。自分でもびっくりです。あちこちにアレンだなという匂いはするのですが、起用した俳優人が違うというのもあるのでしょうがいつも感じたいらいら感、ドタバタ感がないのがいいです。
脚本もいいのだと思うけど、何と言ってもマイヤーズが出ずっぱりで演じた主人公が運命に翻弄される様は観ていてハラハラ、ドキドキもの。

トム・クルーズと「M:I:Ⅲ」の後はウディ・アレン作品の主演とはマイヤーズにはびっくりだ。これまた普通の男を非常に人間臭く演じていてとてもいい。彼にこういう演技が出来るとは知らなかった。
ファム・ファタルなヨハンソンはもうちょっと毒があると思ったんだけどね。いつものヨハンソンが頭にあったのでちょっと意外。アレンに気に入られたそうで次回作も決まったらしい。
しかし何と言っても本作のキャストではまったのはグード君。これまたかっこよくてステキ!上流社会のぼんぼんとはハマリ役じゃないだろうか!上質のシャツを着崩したスタイルなんて惚れ惚れする。マイヤーズが主演だけど画像にこれを選んだのはこのためです。すまん。
モーティマーが上流家庭の娘とは珍しいと思うのだけどヨハンソンと対比する役目としては上々かな?

このラストの展開は唸った。ネット上のボールと指輪。運命がどちらに転がるかは最後までわからない。その善し悪しもね。実に良く練られた脚本だ。

キンキーブーツ2007年03月07日 19時12分05秒

キンキーブーツ(2005)
キンキーブーツ KINKY BOOTS
2005 英 監督:ジュリアン・ジャロルド
ジョエル・エドガートン キウェテル・イジョフォー サラ・ジェーン・ポッツ ジェミマ・ルーパー ニック・フロスト リンダ・バセット

倒産寸前の靴工場を継いだエドガートンは工場再生のために新製品として女王様のブーツを作ることを決める。ドラァグクィーン(イジョフォー)の登場に戸惑う従業員をなだめすかして彼らはミラノのコレクションへ向けて行動を開始する。

オーストラリア人俳優のエドガートンを起用した現代英国労働者階級コメディ。私の大好きな要素満載!公開が楽しみだった。
小心者でただのいい人な靴工場の後継者を演じたエドガートンは期待を裏切ることなく、楽しく温かいヒューマンコメディに大満足。大感動とまでは行かないが小品的な魅力は十分。

エドガートンは地味だけど味のあるいい俳優だ。オーストラリア人俳優だからそんなにたくさんお目にかかっているわけじゃないんだけどヒース・レジャーやガイ・ピアースなどの主演作の脇で好演して注目していたからこの主演はとても嬉しい。
小さな役でも「スターウォーズEP1~3」にも出演していたからそれで監督の目に留まったのだろうか。ジャロルド監督は英国のTVで活躍しているのだそうだが新人発掘に長けているのだという。
最近よく目にする機会の多いイジョフォーはびっくりなキャスティングだがこれまたなかなかのもの。彼も今後どんどん出演作が増えていくだろう成長株だと思う。
保守的な工場の従業員に「ショーン・オブ・ザ・デッド」のフロストや「カレンダー・ガール」のハントがいるが彼らのようなキャラがあってこそのこのジャンル。この人間臭さがいいんだよねえ。

エミリー・モーティマー2007年03月07日 19時54分51秒

ケミカル51(2001)
EMILY MORTIMER 1971/12/1 UK

2006年に新作旧作合わせて一番目にした女優がこの人。新作は「ピンクパンサー」と「マッチポイント」。なんて毛色の違う2本なんだ(笑)。勿論、彼女の演じるキャラクターも大違い。

「Dearフランキー」で暴力夫の素性を隠して息子のために優しい船乗りの父親を演じ手紙を書き続ける母親を演じたが、この彼女がとってもいじらしくて他の作品が気になるきっかけになった。
ストレンジャーのジェラルド・バトラーとのキスシーンでのじれったくなるほどの間!暴力夫から逃げてきたことで新しい一歩を踏み出すのも臆病になっている彼女の複雑な気持ちが伝わってきて、幸せになって欲しいと思わずにはいられなかった。

初見はもはや憶えていないがブルース・ウィリス主演の「キッド」だったらしい。彼の恋人だった?・・・えーっ!あわんよ、絶対に。(笑)
憶えているので一番古いのは「恋の骨折り損」。ケネス・ブラナー監督のシェークスピア作品で歌って踊る楽しいラブコメディだった。主要女優陣4人のうちの一人で優しい色のドレスで踊る姿が可憐だった。これのせいでとっても可愛い女優のイメージがあった。

イメージが違ってびっくりしたのは「ケミカル51」。だってハードでセクシーな格好でライフルを構える殺し屋なんだものー。可愛い童顔をきりっとさせて銃を持って走るアクションぶりはいやいやなかなかのもの。(笑)
可愛いからこそこのキャラは良かったのかも。元夫がロバート・カーライルってとこもツボかな?

その後は結構忘れてたけど再見で確認したのが「ゴースト&ダークネス」のヴァル・キルマーの妻。「エリザベス」の侍女。「ノッティング・ヒルの恋人」のヒュー・グラントのデート相手の一人。これは可愛い!ヒューはなんで彼女にしなかったのかと思った。(笑)
「ゴースト&ダークネス」やジェシカ・アルバの「スリーピング・ディクショナリー」、ショーン・ビーン主演のTVドラマ「炎の英雄シャープ」のエピソード8はどれも時代がかっていてクラシックなドレス姿でつつましい妻だったり婚約者だったり。
「マッチポイント」は現代だがこれも主人公のマイヤーズの妻。「猟人日記」ではユアン・マクレガーの恋人で・・・。
ふと思った。どれも男にろくな目にあわされていない。「Dearフランキー」は夫がDV野郎だし。どこか薄幸な感じがするのだろうか?だからなのか「マッチポイント」の上流家庭の娘っていまいちピンとこなかったのだよね。何も知らずに一途にマイヤーズに熱い視線を送っているところがまた可哀想な立場ではあるんだけど・・・やっぱり薄幸なタイプなのか・・・。

そんなだから色気を感じた事は今までなかったのだが「猟人日記」を観てびっくり。彼女があそこまで大胆なシーンを演じるとは思わなかった。まあこの作品自体がそういう傾向の作品で相手はユアンなので大胆にならざるをえないかと思わなくもないが。

彼女が完璧コメディの「ピンクパンサー」にでていたのも驚きだった。スティーヴ・マーティン演じるクルーゾーのどこか天然で垢抜けない秘書。あちこちで笑えるこの作品中で彼女のボケキャラも結構笑わせる。しかし黒ブチ眼鏡をクルーゾーに外されてドレスを着せたらやっぱり可愛いんだな、うん。

いつもどこか寂しそうだったり不安そうな表情が誰かによって笑顔になった時、とびきりいい笑顔なのが印象的。観ているこっちが彼女の幸せを願ってしまうようなそんな笑顔だ。
あ、これってミランダ・オットーと同じタイプかもしれない。やっぱり惹かれる人はどこか共通点があるってことか。

サンキュー・スモーキング2007年03月07日 21時43分10秒

サンキュー・スモーキング(2006)
サンキュー・スモーキング THANK YOU FOR SMORKING
2006 米 監督:ジェイソン・ライトマン
アーロン・エクハート ウィリアム・H・メイシー J・K・シモンズ キャメロン・ブライト マリア・ベロ デヴィッド・コークナー ケイティ・ホームズ ロバート・デュヴァル ロブ・ロウ キム・ディケンズ サム・エリオット アダム・ブロディ

タバコ業界ロビイスト集団の広告部長のエクハートは嫌煙家の政治家メイシーを敵に廻す。彼の話術は会う人会う人を煙に巻く。そんな彼を息子は尊敬の眼差しで見つめる。だけど彼も色仕掛けには弱い。

おもしろかったー。「知的論争エンタテインメント」っていうコピーに???だったんだけど意味がわかった。とりあえず観てみて!とお薦めしたい。傑作な娯楽映画だ。めまぐるしい話術の応酬がおかしく最後まで笑える。声に出して笑うところもあるが始終にやにやしっぱなしだった。

キャストもメイシーにベロにエリオットにデュバルといった実力派を多数揃えて作品に重厚感をもたらしている。この顔ぶれにも大満足だ。
ただなぜここにケイティ・ホームズ?とは思うけど。結構ポイントの高い役だからムカつくんだけど・・・ま、最後があれだからいっか♪

それにしてもエクハートが超魅力的。ニック・ネイラーは彼のための役だとしか思えない。ただでさえ贔屓にしてる俳優ではあるがこれは誰でもそう思うんじゃないかと思うけど、どう?
インデペンデント・アウォードやGG賞では主演男優賞にノミネートされていたから評価の高さの程がうかがえる。

彼の話術がとにかく面白いんだが、ここに彼の息子の存在が絡んでくるのがさらにおかしい。息子はこの口から先に生まれたような父親を尊敬の眼差しで見ている。カエルの子はカエルで母親を黙らせる交渉術に長けていて、父親からディベートのテクニックを学ぶ。頭のいい息子ジョーイを演じたのは「X-MENファイナル・デシジョン」「記憶の棘」「ウルトラヴァイオレット」での存在感ある子役のブライト。エクハートとの相性も最高で、二人のシーンもとにかく笑える。

楽しい映画はやっぱりいい。観た後にいろいろ考えるのも映画の楽しみの一つだが、観ている時にとにかく楽しいのが映画だな~としみじみ思った。こういう質の高い娯楽映画は貴重だ。